1.《ネタバレ》 ジャン・ギャバンの登場シーンがいちいちかっこ良い。相変わらず男としてのかっこ良さ、それも大人の中年男にしか出せない渋さというものが滲み出ている。冒頭の夜の街道を走るトラック、主人公ジャン(ジャン・ギャバン)ともう一人、とても十八には見えない大人の色っぽさ十分の少女ネリー(ミッシェル・モーガン)の二人が歩く後ろの風景、どれもが詩にでも出てきそうな感じの美しさ、話そのものは特別面白いとも感じないし、犯罪映画にしてはそれほど緊張感も感じない。しかし、作品全体の雰囲気、舞台設定の美しさと登場人物が皆、人間臭くて良い。あの犬もどことなく愛嬌があって良い。最後、殺されてしまうジャン・ギャバンのもとへと駆け寄る犬の姿が何とも悲しい。あの波止場の景色、タイトルにもある霧の立ちこむ美しさ、ジャン・ギャバンは「望郷」という映画でも同じように波止場によく合うそんな俳優だと改めて思ったと同時にこういう役柄、脱走者の役がピタリとはまる。