1.バランスのとれた喜劇ドラマ。
鶴田浩二、佐田啓二、三國連太郎、中村伸郎、淡島千景、岸恵子ら豪華な出演陣。
しかし、主役は柳永二郎なのだ。
柳永二郎といえば、溝口健二の晩年の傑作『雪夫人絵図』でいやらしい絶倫夫を演じていたが、本作ではいたって正常で真面目で気さくな医者を演じている。
この演技幅は凄い。
豪華出演陣の中で、鶴田浩二がトップクレジットだったが、内容的にみてトップなのは不自然だ。
商業的背景があっての序列であることは容易に想像できる。
さて、内容だが、人情味あふれる医者のもとに、数々の患者が訪れ、次々と珍事が巻き起こる。
とびきり面白いとか、感激で涙しきりとか、そういった突出した要素はないものの、無難な人情喜劇としてみれば、なかなかの佳作であろう。
特筆すべきは、後に名俳優、大女優といわれた方々の初々しい姿をみれること。
鶴田浩二や三國連太郎も若くて元気だし、中村伸郎も後年のインテリ風な役回りとは違った若さを感じる。
特に女優陣が、みんな若くて美しい。
角梨枝子、淡島千景、岸恵子、三者三様で美しいやら可愛らしいやら。
後に大活躍した俳優・女優たちの、まだ初々しかった若き姿を観られる貴重な作品でもある。