5.この監督の面白さはホームドラマにあるのかも知れない。一組の男女から、しだいにそれぞれの背景、家族から民族まで広がっていくドラマを、会話で綴っていく。「わだかまり」の根本を見詰めようとする姿勢は正しい。残業の会話でジョークジョークと言いながら、黒人の上司と白人の部下という関係のわだかまりをためつすがめついじり回す楽しみ。女たちの討論会。黒人男はどこかで白人女を求めてるのよ。イタリア系の店での差別論議。今回は人種差別に性差別も絡んでくる。主人公のカップルの裏に、タトゥーロ青年の黒人女性への恋が肯定的に置かれていた。後半麻薬のモチーフがグッと出てくるのがもひとつピンと来なかったんだけど、今のアメリカで家庭を考えるとき避けられないテーマなのでしょうな。道を散歩するシーンがなぜか滑らかな移動で描かれるのが面白い。フィーバーではあるけど、すべて中途半端な情熱になってしまう哀しさみたいのがある。警官に強姦していると思われそうになるとき「恋人と言うな、友だちと言え」なんてあたりに、今黒人が置かれている状況が分かる。タテマエは平等ということになってても、実際に心に生まれてくる「わだかまり」はどうすればいいのか。