2.極小のデリケートな世界に閉じ籠もり、その繊細さに心を合わせ続けることによって、心地よい緊張感が持続できるアニメ。雨やしずくや波紋など、水の描写が素晴らしい。戦争の暴威が荒れているなかで、必死にデリケートな狭い世界に閉じ籠もっている。この蜘蛛や嵐にいろんな象徴を当てはめてみることも可能だろうが(そしておそらく当局への製作理由には、それらしい意義が述べられたのだろうが)、これはおそらく現実逃避の作品だろう。戦意高揚がないのは当局への抵抗ではなく、作家の資質がこういう作品しか作れなかったのではないか。そういう状況が作家の世界をより純粋に煮詰めたということはあるかも知れない。アニメ一般としてみたとき、力作ではあるが、この繊細さは脆弱さにもつながり、もうちょっと生命力のようなものが欲しい気がする。少なくとも当時の子どもは、この狭いデリケートな世界より『桃太郎の海鷲』のほうを面白がっただろうな。