1.《ネタバレ》 この監督作品は芸術路線のようでいて社会派の面もあり、その融合がちょっとギクシャクに感じることが多かったんだけど、これはなんかすんなり入っていけた。見知らぬ町でさすらうってとこは同じなんだけど。霧・道・車。けっこう複雑な、それでいて滑らかな動きをするカメラ。昔はレナート・ベルタだったが、今回は違う人(ユーグ・リフェルって人)。すると同じように動いたカメラは監督の指示なのか。登場する人はみんな傷つくの。年いった農夫、嫁不足の孤独を共感しあえるはずだったのに、うまくいかない。母も息子の不幸を目撃させられ続ける。若者の伯母も疎外を共感しあえるはずだった。父は息子を失ってしまい、息子は死んでしまう。そしておそらくこの村では、あんな黒人女が来なければ良かったんだ、とささやかれることになるだろう。みんなして不幸へ不幸へと傾いていく。「社会派映画」と限定して見られることは監督は不満だろうが、人々のささやかな夢が潰れていく過程を記録する姿勢には、社会派の視線がある。これから「魔女狩り」の誕生まで、ほんの一歩なのじゃないか。