9.ウルグアイっていうだけでちょっと採点が甘くなっているかもしれないけど、期待以上におもしろい。 |
8.《ネタバレ》 最後の最後にカジノで自分を変えるチャンスを掴んだのに、あっさりマルタに譲ってしまう悲しい男。次の日出勤してこないマルタ。彼女は降って沸いたそのチャンスを生かし新たな人生を踏み出してるのにそんなチャンスがあったことすら気づいていない駄目な男。でもそんなハコボが物凄く好きだ。 【遠州】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-02-17 03:40:05) |
7.ときに人形の表情が雄弁になるように、無表情が多くを語ることがある。髪型を変えても気がついてもらえない・写真を撮らねばと言っても反応がない、そこで主人公はがっかりした表情を作らず、無表情で通す。がっかりした表情をすれば、それは「がっかり」だけだ。無表情だと、がっかりしたけどがっかりしたことを男にさとらせないぞ、という意地や、別にがっかりしてないもん、という自分へのごまかしや、その他いろいろ複雑な感情を、見てるほうが類推し膨らませてしまう。無色を保っている彼女の内面に、多彩な色彩が飛び交って見えてくる。演技力とは、そういう無表情を作れる能力を言うのだろう。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-10-29 12:22:08) (良:1票) |
6.説明的な要素を排し、静けさに包まれながら淡々と進行する物語。大人の微細な心理を伝える映像表現の確かさ。遠き南米の人間に己自身を垣間見た気がした。あの仮初めのカップル写真も感慨深い。判りやすい外面ばかりを追った映画が多い中、中年の秘めたる内面を捉えた紛れもない傑作。 【丹羽飄逸】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-06-11 22:50:34) |
5.わだかまりのある中年の兄弟と、その兄から偽りの妻役を依頼された中年女性との奇妙な三角関係を描いた作品です。結構淡々としていて、面白みには欠けるかなと思っていたのですが、予想を裏切られました。確かに地味で淡々としてはいるのですが、これが下手な娯楽作品より面白い。とくに遠方に住む弟エルマンが来てからが見ものです。何ともいえない微妙な笑いを挟みつつ、偽りの妻マルタが弟エルマンに抱く好意、兄ハコボの嫉妬心を実に繊細に描いています。とりわけマルタの見せる前半と後半の表情の違いは絶妙です。単調にも感じる物語前半の描写が中盤以降になって効いてくるあたりに「上手さ」を感じ、また画ひとつひとつの構図に「センスの良さ」を感じます。解釈を観客に委ねた描写やほろ苦いラストも秀逸です。個人的には「神が望めばまた明日」という挨拶が気に入りました。大人向けの良作です。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-05-15 17:45:30) |
4.《ネタバレ》 秀作である。たぶんウルグアイに住むユダヤ人のオヤジの話だろう。結論から言うと、「ウィスキー」とは、「ヤコボの人生に足りないもの」を意味しているのである。それは「うるおい」みたいなものだ。ヤコボはよく働いて、お母さんの介護もして、普通なら褒められる人間であって、全く悪人ではない。ところが、彼は「楽しみ」というものを知らない。「カチカチ」といろんなスイッチをつけたり消したり、飲み水の衛生状態に気をつけたり、壊れた物や穴の開いた壁は気になって放っておけないし、しごく「規則的」に生きているのである。一方マルタは女であるから、タバコやラジオやたまに行く映画など、自分の楽しみを持っている。そんなマルタが、「妻のふり」を頼まれた時、「もしかして自分のことをちゃんと人間として見てくれていたのかも」と期待してしまったのは当然だ。ところが、「夫婦生活」でも全く態度が変わらないヤコボ、「人生には楽しみが必要だと思ってる男」弟エルマンの登場により、マルタの心は揺れる。そして帰りのタクシーの中の涙。あれは、「やっぱり私のことは道具としか思ってなかったんだ」である。そりゃそうだ。「妻のふり」の礼にお金を渡したうえに見送ってもくれないんだから。ラスト、靴下製造マシーンのうなりをひたすら写すショット、これが「ヤコボは他人をマシーンと同じような道具としか見ていなかった」の意味である。それで、まあ私は思った。「ヤコボみたいな男の方が多いよね。」悪い人じゃないんだけど、ケチで鈍感で人の話を全く聞いてなくて、おまけに見栄っ張りで(結婚しているふり)、「女」といったら若い女としか認識していない(レストランでヤコボは若い女をねっとり見てる)、髪型を変えても全く気がつかない、そーゆー男。なんだか、ヤコボ的な男って、日本には余裕でいっぱいいるように思う。その意味で、男子の皆さんには大変ためになる映画ですよ。反面教師のつもりでご覧ください。高校生くらいのお子さんには「こういう男性になってはいけませんよ。」と見せるのもよいでしょう。ついでに、ヤコボ状態のまますでにオヤジになっている人は今からでは遅いです。 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-01-21 23:27:31) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 靴下工場のおじさんも、従業員のマルタも、無愛想な人間たちですが真面目な善人です。2人は人生に対して寂しさも感じているようにも見えます。 この物語に陽気な弟を登場させた理由は、より一層、2人のそういう部分を強調したかったからだと思いました。 監督は、このように真面目に生きる2人の老人に向って、「しかめっ面をしないで、さあ笑って!」と応援しているようにも感じます。 それが「ウィスキー」というタイトルのメッセージではないでしょうか。執拗に繰り返される同じ日常シーンが印象に残る映画ですが、こういう何気ないシーンでも感情移入ができる自分がいます。 毎日の生活は本当に孤独だし、時には辛く、そして楽しいのだと思う。 そういう微妙な空気に少しはまりました。 マルタという老女を見ていると、女はいつまでたっても女なのだなぁと感心しました。 たった3人だけの平凡な物語ですが、ぐいぐいと観客を引き込む力はあったと思います。 ミニシアター系映画の好きな人には観る価値はあるでしょう。 この映画のラストのように、人生は寂しさが付きまといますが、それでも下を向かずに笑って前に進みたいものです。 生きて生活をするということは、それだけでちょっとだけ素晴らしいことだと思います。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-12-31 23:05:31) (良:2票) |
2.下町で古びた靴下工場を細々と経営する初老の主人ハコボの元へ、疎遠になっていた弟のエルマンが訪ねてくる。ハコボは事もあろうに、従業員のマルタに偽装夫婦になる事を頼み込み、三人での束の間の奇妙な共同生活が始まるというのが、大雑把なストーリー・ライン。何故、ハコボは結婚していなかったのか、或いは偽装結婚を何故する必要があったのか、などと言った素朴な疑問には殆んど触れられないまま、ドラマは進行していく。勿論、それらには然したる意味はなく、何の変化もない同じ事の繰り返しで明け暮れしている所へ、一石を投じた事によりドラマが生まれ、やがて人間の本性が炙り出される面白さ。様々なエピソードを積み重ねる事でそれらは的確に描出されていく。静かな語り口だが演出は実に巧みで、ドラマらしいドラマがなくとも、多くの事を語りかけてくる作品だ。もう若くもなく、同じスタイルに固執し変化を望まない一組の男と女。仕事以外のことには無気力・無関心で、自分の殻に閉じこもって人生を楽しもうとしないハコボ。今までどのような人生を送ってきたのだろうか。しかし羽振りのいい弟には弱みを見せたくないという、兄としてのプライドだけは持っていて、その頑なな姿勢はどこまでも崩さない男だ。年配の従業員マルタも寡黙で仕事には従順な女性として描かれるが、利己的で単純なハコボと違い様々な表情を垣間見せる。彼女は一人では生きていけない事を自覚し、そして何かに期待を抱きながら生きてきた女性なのである。偽装夫婦を頼まれた時に快く応じたのもやはりその何かを期待したからで、たまたま年恰好が同じという程度の理由で、マルタを選んだハコボとは大違いだ。だからラストのしっぺ返しも当然の成行きとも言える。表向きは例え同じ方向を向いているようでいても、生き方や考え方というものはやはり人それぞれ違うという、至極当然のことを映画は改めて教えてくれる。“チーズ”と“ウィスキー”の違いはあっても、人生を笑顔で過ごしたいのは何処の国の人も同じだと、作者は言いたげだ。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-06-09 16:21:21) (良:3票) |
《改行表示》1.この3人の役者の演技に脱帽!特に女優の細かい表情がいい! 動かないカメラで同じカット割で平坦な日常を見せるもころが凄くいい。 特に二つ目のスィッチを押したところで階段を上っていく、というところまで 毎日が同じタイミング、ってのが、若い監督なのによくこういう演出ができるなあ。 偽装結婚のはずが次第に愛が芽生えてハッピーエンド!ってな感じの ハリウッド的なノリを一切排除しているのが心憎い。リアルでいい映画です。 【GO】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-05-15 18:04:08) |