《改行表示》26.《ネタバレ》 家庭的な雰囲気の中に突如割り込んで来る暴力シーンの切れ味が、本作の最大の見どころであろう。その出来は率直にどれも素晴らしく、監督は流石の手腕だと思う。 より優れていると思うのは、この暴力の持つ二面性の表現というか。基本的には正義な(とまでは言わなくとも、正当防衛な)主人公の暴力は、本来人間が備える攻撃性(男なら分かる筈)を満たすという意味での痛快さと同時に、主人公の暗い過去を具現化するところの重苦しさを湛えている(更に同時に、本来人間が持つべき「暴力を嫌悪する感情」と複合しての悲痛さを含めて)。 その意味で良く出来ていたのは、息子がフォガティを射殺するシーン。ある意味「適切な」暴力を果断に行える息子には、人間としての成長・成熟を感じることと同時に、父親が最も忌むべき自身の残虐性が受け継がれているという悲劇もが描き込まれている。そんな息子から銃を取り上げ、暫く思案げにじっと見つめた末、そっと抱きしめる主人公。 本作は、家族の愛の物語なのだなあ、と。暴力と、過去からただ逃げる主人公への嫌悪を越えて、それを強く感じられたラストの余韻も素晴らしい。ヴァイオレンス映画の佳作。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-04-25 11:39:43) (良:1票) |
《改行表示》25.そっとしといてやってくれ! そう叫ばざるを得ない映画だった。 この映画の主人公はひっそりと普通に暮らしていたいだけなのに、何故放っといてくれないのか。 次々に送り込まれる刺客。それらをものともせず倒して行く様は痛快でもあるのだが、スカッとするようなアクション映画ではない。この映画におけるバイオレンスは悲劇しか生み出さない。 家族の平和の為に全てを投げ打つ主人公に感動させられた。 【ヴレア】さん [DVD(字幕)] 8点(2018-03-31 16:59:11) |
《改行表示》24.《ネタバレ》 最初が強盗2人組。次がエド・ハリス率いるマフィア3人組。ラストがマフィアのボスで実の兄であるリッキー達4人。こーゆー構成は結構漫画チックで、かつ王道。エンターテイメント作品としての定石を踏んでいます。でもその内容は全然別物。こんなに暴力的で、かつ美しいバイオレンスアクションは、未だかつて見たことがないかもっていうレベルです。 最初のかませ犬的扱いをされる強盗2人組だって、プロローグでの圧倒的な存在感は、雑魚キャラのそれではないわけです。この2人がメインになっていたっておかしくはない。その2人が瞬殺されたとき、この映画は普通ではないと気付きます。 でもこの作品で特筆すべき点は、バイオレンスよりアクションより、むしろそのドラマ性にあるのかもしれません。夫婦愛。親子の絆。『父は昔マフィアだったらしい。かなりひどい人間だったのかもしれない。』そのことを知った妻が、なんとなく察した息子が、父親とどう接するのか。この映画での解答は、『ただひたすらうろたえる。』これが相当にリアルです。そりゃあまりにも今までの父とその正体とのギャップがありすぎて、答えなんかすぐに出せるわけがないんです。 ラストで、無邪気な娘は父にお皿とフォークを。息子はとまどいながらも料理を父のほうへ差し出す。これが血のつながり。子供達にとっては『それでも父親だ』というメッセージ。では妻はどうか。最後の妻の表情だけでは、正直私にはよくわかりません。このまま夫婦を続けるのか。それとも・・。そうか。ここだけは、見ている私達の価値観で、『君が同じ立場だったらどうするか、自分で決めろ』っていうメッセージなのかもしれないです。ほんとかなぁ。 でも私はここまでいろいろ述べたのに、見ているときは全然違うことを考えていました。『こーゆー過去があるって憧れる。かっこいい。しびれる。』と、ずれたことを思いながら、一人興奮していたのでした。 息子のエピソードもかなり良かったですね。いじめられっこに見せかけて、抑えられないサラブレッドの血。やばいっす。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 8点(2018-03-20 02:43:22) (良:3票) |
《改行表示》23.《ネタバレ》 あっという間にラストまで見入ってしまった。 この釘付け感は凄い。 平穏であれば本性を出さず、いざ平和を乱すモノが現れば家族(国)を守る為、 保身という大義名分で暴力(戦争)で解決しようとする・・・終わってみれば、主人公はアメリカという国そのもの。 セリフのないラストシーンが秀逸でした。 追伸:コスプレの営みも良いけど、ちょっと乱暴な位の方が燃えちゃうんだよね~。(ひとり言) 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 8点(2013-06-15 16:51:28) |
22.《ネタバレ》 ヴィゴ・モーテンセン演じるトムの華麗な殺人テクニックが見所ですが、バイオレンスというより、全編と通すとサスペンス色の方が強い映画でした。トムは一体何者なのか?真実が明らかになるにつれて、家族との距離が離れていく様はせつないです。しかし、ラストの食卓のシーンの異常なリアルさに、感動しました。そんなに長くない映画なのでぜひ御覧あれ。 【nyaramero】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-04-25 19:36:38) |
21.《ネタバレ》 アメリカの乾いた土地で、二人の殺人者がどうでもいい会話をするオープニングでつかみはOK。リアルで重みのある動きの暴力シーンに、程よく気が狂っていて渋い登場人物達。とくにフォガティとジョーイのからみは最高。なかなかの傑作です。面白いというよりカッコ良い。絶妙なタイミングでエンドロールにはいるラストシーンも素晴らしいです。ただ、主人公の兄リッチーの部屋での暴力シーンは、なんか不自然な気が・・・。 【モンチョ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-07-14 17:00:36) |
20.《ネタバレ》 「暴力の歴史」とは何か?我々は誰しも暴力に晒される危険があり、また、我々の誰しも内なる暴力性を持っている。いじめの標的にあった息子が、皆の前で「自分はチビの腰抜け」と宣言し暴力を回避するのもひとつの方法ならば、暴力に対し更なる暴力で対抗することも可能だ。冒頭に現れる二人組は、そんな暴力の象徴のような存在だが、平凡なコーヒーショップの店主にあっさり撃ち殺されてしまう。しかしその店主は、いじめっ子を病院送りにした息子に「暴力で解決するな」と説く。暴力は更なる暴力を呼び、店主をつけ狙うマフィアを皆殺しにし、マフィアのボスである実の兄をも殺害するに到る。「暴力」の権化であるジョーイを砂漠で「殺し」、平穏な生活を選んだトムだが、拭いきれない「過去」は暴力という形で追いついてくる。暴力はなくならない。それが現実だ。しかし、不安を湛えながらもトムを迎え入れる「家族」が、そんな現実に僅かな希望を残している。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-01-16 10:15:35) (良:2票) |
《改行表示》19.《ネタバレ》 ヴィゴの演技が素晴らしかった。特に、トムからジョーイに変わる瞬間の表情がたまらない。息子がフォガティを撃ち殺した後のあの表情も怖かった。 最後、家族の待つ自宅へ戻って食卓につくシーン、自分の過去を悔いて、愛する妻と家族と平凡に暮らすことを夢見た男の想い、本当の父親・夫の正体を知り、過去を清算し戻ってきた父親を待っていた家族の想い、深く考えさせられるとても印象深いラストシーンです。 【14/5/10再鑑賞】 【シネマブルク】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-01-07 19:42:44) |
《改行表示》18.《ネタバレ》 この作品はタイトルで損してるような気がする。暴力映画かと思ってみたが、良質のサスペンス。グロいシーンとかもそんなにないし。DVDのカバーに書いてあるコピーが「衝撃のストーリー!興奮のアクション!究極のバイオレンス!」…全然違う気が…。 バレ→。1回目のセックスシーンが出た時に「こんなシーン、いらんのでは…」と思ったが、きちんと2回目のセックスにつながっている。1回目、トム。2回目、ジョーイなんですね。で、2回目の方が女は感じている。トムでいることよりも、ジョーイになることを女は期待するのかなあ…などと考えたのでありました。 【MARTEL1906】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-05-23 02:43:42) (良:1票) |
《改行表示》17.《ネタバレ》 「イースタン・プロミス」より楽しめました。っていうか、この監督の作品の鑑賞方法がわかったんです。 あんまり深く考えない方がいいんです。 劇中で描かれていない人間関係は、話しのテンポを落とさないために敢えて観客のイマジネーションに任せているんだと思います。 ラストの食卓シーンはもう少しわかりやすく描いてもらいたかったですが、90分程度でこれだけスッキリさせるんだから、イラついた時なんかには、もってこいの娯楽作品です。 でも、こういうの、日本がマネして作ったとしたら、私は絶対観ないと思う…… 【クロエ】さん [DVD(吹替)] 8点(2009-05-04 01:22:07) |
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《改行表示》16.《ネタバレ》 兄であるウイリアムハートが素晴らしくカッコイイ。リッチで、女たらしで、暗黒街のボスで、複雑な大人の事情もありそうなのが深みにもなっていて、とまるでオトコの好きそうなツボをよく押さえ、実際にとてもスマートでカッコよく見える(体型はやや肥満気味)しかしそういった兄のワルの魅力を次々に否定し、なおかつカッコイイのがディゴだ。一途なオトコの魅力。壊れかけている家庭を必死で取り戻そうとしているディゴは小市民かもしれないが、とても魅力的だ。キャスティングに兄を安っぽい役者を使わなかったのが素晴らしい。ディゴをカッコよく撮りたいために兄をショボくするのが映画としてのわかりやすさであり、セオリーかもしれないが、あえて貫禄たっぷりのハートを使い、そしてそれに負けないディゴを起用したことにより、トム、あるいはジョイの言葉に説得力が増し、ラストシーン食卓の沈黙が生きた。 野暮なことはいいたくないが、結果的にディゴはまた殺人を犯してしまったのであり、家族との幸せ云々よりも、大きな問題な気がするが(トムとしての殺人)そこは見過ごすべきなのだろうか? 【コウ】さん [DVD(吹替)] 8点(2008-10-03 03:04:25) |
15.《ネタバレ》 プロットは西部劇のものでありながら観賞後の余韻は真逆と言っていいほど。冗長なシーンを一切排除し、バッサリ、スッキリとした無駄の無い出来。冒頭の疲れきった強盗二人組、トムが反撃した際のバイオレンスは強烈。この作品は全体を通して主人公=正義であるはずのトムによる暴力が最も痛々しく描かれている。クローネンバーグはたとえ正義であったり、正当防衛であってもやはり暴力は暴力であるということが描きたかったのだと思う。最近特にアクション映画などで主人公が人を殺しても、血が一滴も出ず当たり前のように流される事が多く、そういった風潮に対するクローネンバーグの警告のようにも感じた。そして何よりも、ぎこちないながらもトムを二人の子供が迎え入れるラスト。ひとまずハッピーエンドで、感動的な場面だ。トムがどれだけ素晴らしい家族を得たか、彼らがどれだけの絆で結ばれているか。最悪の状況下でそれらを改めて強く知らしめられ、同時に何か重苦しいものが心に残り、どこまでも深い余韻を持たせる。あらゆる感情を同時に表現した素晴らしいラストだ。 【Sgt.Angel】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-08-29 17:23:19) (良:1票) |
《改行表示》14.《ネタバレ》 映画冒頭のモーテルから一気に映画に惹き込まれました。 この監督のバイオレンス描写と性描写は凄いですね。言葉に出来ないからこそ、行動で表現するといった感じで、安易にアクションやお色気シーンに頼っていない事が良く分かります。 ヴィゴ演じる、ジョーイの無敵さが少し気になりましたが、後は個人的には完璧。 最後に家族が彼を受け入れる食卓のシーンはグッときました。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-07-28 23:53:39) |
13.なかなか手に汗握る展開ではらはらしました。でも最後が・・・・。まるかバツかはっきりさせて欲しかったな。いまさらですがダニエルクレイグはいい役者さんですね。 【たかちゃん】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-09-18 10:54:14) |
《改行表示》12.《ネタバレ》 マフィアの誰もが弱すぎる気が・・・ みんな結構一撃でやられてませんか? トムもジョーイもそれぞれかっこ良かった。ラストが急に終わる感じでしたがトムとなり家族の元に戻ってきた夫(父)を家族全員で受け入れたという解釈なのかエディだけは何となく許せないままなのか・・・とにかく良い映画でした。 【二矢PUNK】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-11 23:30:38) |
11.《ネタバレ》 野生の世界に「暴力」という言葉は存在しません。動物たちの“暴力的”アクションは、全て自然界のルールの下に、生きるために使われる(はずの)ものだから。「暴力」という言葉は、社会が決めた呼称。ゆえに極めて人間的な価値観であると思います。ですから暴力の是非を問うなら簡単です。暴力は全て悪。なぜなら、スポーツとしての格闘技も、正当防衛の殺人も、自己防衛の戦争も「暴力」ではないから。人間はルールに外れたもののみを「暴力」と認識します。その根元にあるのは強烈な自己保全。自己の存在を脅かす暴力に恐怖する一方、自己を守るための暴力を否定しません。いや、映画、小説、漫画、ゲームなどヴァーチャル分野での人気を見るにつけ、能動的に暴力を欲しているようにさえ思えます。自分の身が安全という条件が付けば(もしかしたら付かなくても!)、暴力による闘争を好むのが人間。そういう生き物であることを誤魔化してはいけないと思います。本作における「暴力」の描写は的確です。何の前触れもなく我が身に降りかかってくるもの。またかつての自分の蛮行は同じ暴力によって報いられるということ。セックスも暴力を語る上で避けて通れません。息子の暴行は明らかに父親に感化されたもの。暴力のあるがままの姿を描いています。そして重要なのは、本作の姿勢がニュートラルであるということ。正当防衛だから肯定するのではなく、かといって暴力は全て悪だと断じることもしていない。“暴力によってでしか守れないもの”と、“暴力によって失うもの”の両方を等しく示しています。主人公を迎え入れる子供たちと、うつむく妻。主人公は大切なものを守れたのでしょうか、失ったのでしょうか。答えは出ないまま唐突に終わります。でもそれが本作の答え。それは現時点での人間の「暴力」に対する回答でもあります。答えを出すために考えなければならない。人間は暴力を好む生き物。でも他人のために涙を流せる生き物でもあります。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-05-01 18:22:51) (良:3票) |
10.テンポよくて、悪人らしき人たちがバタバタ死ぬので痛快です。映画全体のテーマは重そうな気がしますが、深く考えずに楽しみました。ただ、ラストはあれって思ったのは私だけでしょうか。あれが作品の深みなのかなあ。 【ぽじっこ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-05-01 12:58:15) |
《改行表示》9.始めから終わりまで無駄のない90分間。ヴィゴ・モーテンセンもエド・ハリスも良い演技をしています。ヴィゴ・モーテンセンは気弱な食堂の店主も冷酷な殺人者もどちらの顔もよく似合う。やや物足りない感もあるが、余韻を残したラストの締め方も良。 最初は7点を付けましたが2回目の鑑賞を終えてやっぱり8点にします。 【丸に梅鉢】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-03-12 20:44:37) |
8.《ネタバレ》 最後まで緩まない緊張感、刺激的な暴力描写、集中して最後まで一気に観てしまいました。個人的にはクローネンバーグの最高傑作だと思っています。小さな端役まで出演者は全員違和感なし、ヴィゴ・モーテンセン、エド・ハリス、ウイリアム・ハート、この3人は特にハマリ役だったと思います。ラストが単なるアクション映画なら敵を皆殺しで普通にハッピーエンドだけど、過去を知る連中を一掃出来ても気まずい雰囲気でしょんぼり帰宅するところが普通じゃなくて良いです(笑)。原作はコミックみたいだけど気に入ったものは何でも映画にしてしまうところは、さすがクローネンバーグといった感じですね。 【眼力王】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-03-01 00:57:28) |
7.《ネタバレ》 飛び散る血沫、肉片。ゾンビ映画か?ってくらいグロい演出が随所に散りばめられてて、なんかこう、ゾンビ映画だとそれが笑いのツボに来るんですが、この映画の場合、痛点を刺激するんですよね。ほんとに痛みが伝わってくる。セリフ、立ち回り、カメラアングルなども、よく練られています。そういう意味では、監督の手腕、センスの良さを感じる映画でした。話自体も面白いです。ラストシーンも秀逸でした。ただ、1つ納得がいかないのは、ジョーイからトムに生まれ変わった経緯が腑に落ちないところでしょうか。 |