1.《ネタバレ》 長かった。しかも前半ではゴッホの絵はほとんど出てきません。オランダで炭鉱労働者に同情して説教師の傍ら彼らの生活を描くことから画家として出発したゴッホは一説によると売春で自分と子供との生計を立てていたという貧しいシングルマザーに振られ、ものの本によるとイギリスでも誰かに振られ、他人に対する共感性多過だと返って女性には振られやすいのかもしれませんが、彼自身それほど頼り甲斐のある男だったかというとそんなことはなかったわけで、どうせ一夫一婦の誓いを立てて身を捧げるなら、例えば画家に転身する前のポール・ゴーギャンのような稼ぐ男の方が絶対にいいです。そして弟テオの誘いで流れ流れてフランスのパリから南仏のアルル、パリ郊外のサンレミとゴッホの長い長い忍耐の旅が続くのですがこの旅に付き合って退屈させられないのはゴッホと同じくらい共感性の高い人だけかもしれず、そういう人ならこの作品に10点満点をつけるかもしれませんが、わたしは残念ながらそうではないのでこの点数です。アルルでの開放感とゴーギャンとの共同生活と苦い喧嘩別れを起点としてゴッホ特有の数々の名作が生まれるわけですが、ここに至るまでに本作品の鑑賞者が強いられる忍耐はゴッホ自身の忍耐とは比べものにならないはずなので我慢して鑑賞しましょう。絵画に生命力を爆発させたゴッホの生涯を演じたカーク・ダグラスには「迫真の名演技」を超えるものがあります。なぜならゴッホ自身が自殺を遂げてその肉体が滅びた後もゴッホが描いた数々の絵画はこの世に残り、それらに感動を覚える俳優ならゴッホの精神の軌跡を言動で表現することは絵画を見ることと同等なのです。