3.ぼくはある問題を除けば大変楽しく観れました。主人公の見えるとても狭い空間の中だけで進む物語、序盤のティーン向けのラブコメから終盤に向けてまさかのスリラーになっていく構成、そして主要キャストの豊かな芝居。期待していた(突き抜けに馬鹿まっしぐらな映画?)よりもずっと考えて作られている作品でした。序盤の裏窓のような「覗き行為」から発展するラブストーリーと、目撃してはならないものを見てしまった故のスリラー展開。主人公の目的の移行と共に好奇心は絶やされる事無く目紛しく展開が変化するので、すごく新鮮さを得ました。その構成を思いつき、それを成立させた技量は関心せずにはいられませんでした。まさかD・J・カルーソー監督の作品でこんな新鮮さを味わえるとは思っても見なかったので大変満足しております。デビッド・モースの外見的に取り繕われた誠実さに潜んだ悪意のある役を演じる上手さは、本当にお見事です。ただこの作品には問題があり、それは指摘せずにはいられない問題です。それは冒頭の父親との離別の件が後半で伏線として回収されないのは小さくない問題だと思います。個人的に、あの事故に彼に過失はないのは一目瞭然だが、それによって後遺症のように彼の足を引っ張る要素を彼が背負っているようにまるで見えない。極端なほどの人格の落差もなければ、荒んでいる様子もない。それが彼の最終的な変化や葛藤に絡んでこないなら、いっその事、“一年後”の設定以降から物語が始まってもなんら問題ないと思います。ただ、それが上手く物語と絡んでさえいたらもっと良くなっていたと思うから、とっても残念です。