9.《ネタバレ》 おそらく賛否両論あるであろうラスト。もしかすると『否』のほうが多いかもしれません。
ですがきれい事ばかりでラストをしめくくる作品より、私は人間の本音をあるがままに描くこーゆーラストにぐっときます。
重要なシーンがあります。注文していた結婚式の招待状が届くシーン。幸せだった頃の自分たちを思い出す重要なシーン。良くも悪くも、怒りは時とともに風化していくものです。このシーンはその風化をくいとめる重要なシーン。冒頭の結婚式の打ち合わせをする幸せそうなシーンが蘇り、犯人を許すなという気持ちに一気に引っ張られます。
この映画はエリカ・ベインの人物描写が凄く良い。ジョディ・フォスターという名優が演じているというのもあるでしょうが、脚本と監督が良いのだと思います。
警察署に行き捜査状況を確認。見事なまでのお役所対応。長時間待たされたエリカは意を決してガンショップへと行ってしまう。このときのエリカの気持ちが痛いほど伝わってきます。誰が彼女を責められるでしょうか。
1度目のコンビニ殺人⇒正当防衛。2度目の地下鉄殺人⇒過剰防衛。このあたりの、エリカの心境の変化の描き方が抜群に上手い。3度目も結果正当防衛ではありますが、そもそものきっかけが『巻き込まれ』ではないのが今までと違います。そして4度目とクライマックスは、遂に自分から狩に出ます。エリカの理性が少しずつ失われていく様子が、無理なく自然に描き出されています。
辛いストーリーなので満点はつけづらいですが、ドラマ仕立てのサスペンスとしてはほぼ満点の出来。
同じアパートのスーダン出身の女性の存在感が抜群に良い。