1.失恋による傷心から不眠生活が続く青年。そんな彼が、深夜バイトをしながらふと手に入れた能力は、「時間を止める」というものだった。
いわゆるミニシアター系の作品なので、卓越したストーリーでぐいぐい見せるというよりは、美しい映像と雰囲気で見せる映画である。
こういう映画は元来嫌いではない。
フォトグラファー出身の監督らしく、一つ一つのカットがとてつもなく美しい。
時間が止まっているシーンよりも、他の何気ないシーンのそれぞれがとてもアーティスティックで、惹き付けられた。
最も興味深かったのは、主人公が新たに恋に落ちる相手の女性が、主人公の気持ちの深まりと共に、どんどん魅力的になっていく様だ。
まさに主人公の想いと同じように、観ている者の想いも深まっていく。
ある意味、非常にナイーヴでウジウジとした「男の子」映画なので、女性にはあまり勧められないかもしれない。(作中の小ネタなども、いかにも“男子”が喜びそうなネタが多い)
しかし、誰しも「眠れぬ夜」を過ごした経験はあるはず。
眠れない夜の主観的な感覚を、「時間が止まる」ということで表現したアイデアは、映画的にとても良いと思う。