1.《ネタバレ》 安田好弘という弁護士の信念を見せつけられるドキュメンタリー。なぜ彼が死刑を求刑されるような被告人の弁護人を多くつとめるのか、それがこの映画のテーマだろう。和歌山カレー事件においては無罪の心証、新宿西口バス放火事件においては弱者への眼差し、名古屋女子大生誘拐事件においては被告人との接見、など個別の事件におけるエピソードが語られるが、この根底にあるものは安田の「更生できない人間なんて存在しない。それはヒトラーであってもそうだろう」とまで語る信念である。しかしこれは単なるオプティミズムではない。そう呼ぶことを許さないほどの実績と資料の山、被告人との交流が安田の深い覚悟を端的に示している。そして緻密な事実の検証は安田が単なるアジテーターではなくプロの弁護士であることの証である。「自分の家族が殺されても死刑回避を主張する。そこはブレないだろう」とまで断言するほどの信念を、大きな説得力を持って聞くことのできるドキュメンタリー映画を私はほかに知らない。