《改行表示》17.《ネタバレ》 ネタバレしています。未見の皆様ご注意ください。 タイトル『プリズナーズ』は、主にキリスト教に対する“囚人たち”を指すと思われますが、私はこの分野で語るだけの教養を有していないため、キリスト教を一般的な“価値観”(ルールあるいは思想でも構いません)に置き換えてみることにします。それでも大筋は変わらないと考えます。 『囚人たち』は、特定の誰かではなく全ての人々を指すもの。社会生活を営む人間は、必ず所属するコミュニティ共有の価値観に“囚われて”生きているからです。これが前提。しかし本作では圧倒的多数が支持する価値観(=法律)に沿わない者が現れました。誘拐犯と主人公です。ここで注目したいのは、彼らが価値観を無視した理由。2人とも自らの内なる価値観を優先させたのです。そう、私たちは単一の価値観のみに縛られている訳ではありません。時に相容れない複数の価値観に囚われて生きています。要は、どの価値観を優先させるかの問題。誘拐犯の価値観は論外ですが、主人公が優先させた価値観は多くの人々の共感を得る事が出来るでしょう。“我が子の命を守る”は金科玉条。水戸黄門の印籠クラスの威力を持ちます。しかしながら、同等以上の価値を有するのが“私はあなたを殺さないので、あなたも私を殺さないでください”の対人相互不可侵の約束。人が群れて暮らす上で最初に必要だった原始のルールで、いわば基礎の基礎。最上位に置かれる“価値観”です。ですから、主人公が優先させるべき価値観を逆転させたと感じた時、私たちは「遣り過ぎだ」「それは無い」と判断した訳です。 因果応報が尊ばれるのが映画の世界。対人相互不可侵の大原則を破った主人公がキツイお仕置きを受けるのも道理です(注:これまでの主人公の行動に従えば、真犯人の目星がついた時点で問答無用で拘束すればいい話。映画のルールに則って、彼はあえて罰を受けたと見て取れます)それでも主人公は相手の命を奪う一線は越えていなかったので、彼もまた一命を取り留めたのでしょう。もっとも、普通ならあの笛の音は気づかない。気づけない。気づいた警官こそ法律の象徴であり、彼が蔑ろにした価値観に他なりません。見ようによっては、なんとも皮肉な結末と言えそうです。 【目隠シスト】さん [インターネット(吹替)] 8点(2021-06-30 20:27:32) |
《改行表示》16.目が離せない。 物語は、暴力的でありながら、一方で非常に静かに進んでいく。 動の父親と静の刑事のコントラストが見事だった。 多くを語らず、描かれない部分を観ている者に補完させるのがこの監督のやり方だと思うが、本作ではそれが終盤の緊張感を一層高めることにつながっていて心地よい。 ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホール二人も素晴らしかったが、ポール・ダノの彼らしい演技も見応えがあった。 長さを全く感じさせない、力のある映画。 |
《改行表示》15.《ネタバレ》 主人公である父親の取る行動や態度がどうにも気に障る。 娘が行方不明になって気が気でないのは分かるが、警察にまで無茶な注文をつける様は、これぞモンスターペアレントって感じ。 知的障害のある男を犯人と決めつけ、監禁して拷問するなど、もはや誰が悪役なんだか分かりゃしない。 しかし、彼の狂気もまた映画の見所であろう。 さて、サスペンスとして素晴らしい出来なのは認めるが、かと言って手放しに褒められるようなものでもない。 最大の問題点は分かりにくいことだ。話の大筋を理解することは容易だろうが、この映画のすべてと言わずとも9割方の内容を、一回見ただけで理解できる人間が果たしてどれくらいいるのだろうか? 分かりにくい部分は多数あるが、特に意味不明だったのは、黒人の少女が保護され、主人公が彼女と面会するシーン。 少女は主人公を見て「あなたもいた」と言った後パニックになる。主人公はそれを聞いて、突然病院を飛び出す。 このシーン、本当に意味がわからない。「あれ?実は親父が犯人なの?」って勘違いしそうになるくらい意味不明。解説サイトで説明を見てやっと理解はできたけど、あんな描き方で普通分かる? あとは、犯人が実は…という結末も、伏線がなさすぎて、驚きがなかった。 【椎名みかん】さん [インターネット(字幕)] 8点(2021-04-13 06:00:48) |
14.《ネタバレ》 長尺ながら、その長さを感じさせず、全くダレることなく最後まで緊張しっぱなしで鑑賞出来ました。ヒュージャックマンとジェイクギレンホール、二人の熱演が物凄いので感情移入は必至です。被害者お父さんも犯人も共に、敬虔なキリスト教信者であった訳ですが、お父さんは子供を救うために悪魔になり、犯人も我が子の悲劇を機に、神に挑戦すべく悪魔になりました。被害者も加害者も紙一重。間に入った形の刑事も、お父さんからは責任を問われたり、自分のミスで貴重な情報網である容疑者を死なせてしまったりで、既に第三者としての域を超えて巻き込まれていきます。見ている側も、最終的な犯人が誰なのかはもうどうでもいいってくらい、とにかく子供たちを無事に家族のもとに戻してあげて、お父さんや家族を楽にさせてあげてと悲願するばかりでした。全ての登場人物の気持ちが痛すぎて痛すぎて。ただ、ここまでタフで信念を持ったお父さんが、真犯人の前で完全に言いなりになってしまったところから失速してしまったのが残念。余韻を残してのエンドですが、ホイッスルの音を聞いて刑事がお父さんを救出している方に一票。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-07-31 14:34:53) |
《改行表示》13.《ネタバレ》 長いが、飽きさせない。 警察のずさんな捜査で事件解決が遅れているのは明白だが、そう言ったことはさておき没頭できた。 ヒュージャックマンが穴の中に囚われてしまうのは、因果応報だろうか。 【チェブ大王】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-05-06 00:33:57) |
12.圧倒されます。「圧倒」というがなぜかよく似合う映画。上映時間は長いのですがわりと気にならない。サスペンス映画としては間違いなく良作。オチと言うと安っぽいが、オチも満足できるストーリ展開です。なんたって、きちんとオチますからね。悲しいなあ。 【ばかぽん】さん [インターネット(字幕)] 8点(2019-10-31 07:23:39) |
《改行表示》11.鑑賞される方は絶対に予備知識無しで観て下さい。 下手に展開を知ってしまうと見応えが激減します。 エンドロールが終わってから身体にズシリとタイトルの意図がのしかかってきます。 良作です。 【たくわん】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-02-15 12:49:02) |
《改行表示》10.《ネタバレ》 引き込まれる内容で中々面白かったですが、最後の犯人への結びつけがちょっと弱い気がしました。 それでも見応えのある作品で良かったです。 主人公は最後は助かるに一票。 【ローグ】さん [DVD(吹替)] 8点(2017-07-09 21:05:59) |
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《改行表示》9.《ネタバレ》 ハードでタフな出演者たち。誰をもってしても普通じゃない。 娘をさらわれた男。娘を取り返すためには手段を選ばない。ヒュージャックマン。 事件を追う警官。有能。我慢強い。弱点もあり。ジェイクギレンホール。 この二人だけでも相当なもんだと思うのですがまだまだガンガン人が絡みます(笑)。わからなくなるほどに。 綿密に計算された脚本。どこに行くかわからないというものではなく、どこに行くかはわかるんだけど行き方が全く想像できないといった感じ。 おススメです、一度では見逃してしまうかも(笑)。 【JF】さん [DVD(字幕)] 8点(2016-02-16 14:25:25) |
《改行表示》8.《ネタバレ》 この映画、ひとごとじゃない―。 いやいや!娘が誘拐されたとはいえ証拠もないのにやり過ぎでしょ!釈放されてつかみかかるまでは分かるが監禁、拷問までしてしまうのは完全暴徒。日本文化じゃ理解に苦しむね。 しかしながらどういうクライマックスを迎えるかギリギリまでわからない点では最高のスリラー。長い時間も退屈無し。最後どっちに転んでもバッドエンドが自分好み。ジェイク・ギレンホール演じるロキ刑事がまたワルでキレるあたりがかっこ良すぎた。 |
7.《ネタバレ》 ○重厚なサスペンスに見事な配役。多少の長さを感じるものの、サスペンスミステリーとしてなかなかの出来。○終盤の展開がもうひとつだが、エンディングの伏線などは見事だった。 【TOSHI】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-10-18 01:00:48) |
6.良くできたストーリーとキャラクターで、最後まで緊張感を保っており、面白い映画でした。ちょっと知恵おくれな容疑者が、現代の日本のニートを感じさせ、日本でも起こりえる話であるところが、サスペンスにリアリティをもたせて非常に良かった。 【シネマファン55号】さん [インターネット(字幕)] 8点(2015-10-08 13:53:44) |
5.面白いな~。こういうジャンルは一頃韓国勢が強みを持っていた印象があるが、ハリウッドも負けてないってところを見せてくれました。サスペンスとしての面白さを凝縮した演出、謎が謎を生む話の転がし方、そして殴られ続け、気の毒すぎる顔面にされたアレックス(演じるは「リトル・ミス・サンシャイン」のポール・ダノ)を見て何を思うか…。こういった展開の引き換えに、若干反則気味の手も使っているので、最後の30分はその反動を食らった感があるにはある。映画は最初から最後まで通して一本であり、分割して評価することはできないものなので採点においては迷いもあるが、ここまで楽しませてもらったのだから素直に高評価でいいかな。8点です。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-08-17 20:30:23) |
4.《ネタバレ》 これから厳しい冬を迎えようとしているアメリカ北部の田舎町。平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた2つの家族、ドーヴァー家とバーチ家に突如として悲劇が訪れる。それは、お互いの幼い娘たちの不可解な失踪事件だった。すぐに容疑者としてアレックスという男が逮捕されるのだが、彼は10歳児並の知能しか持ち合わせていない、いわゆる知的障碍者だった。しかも物証となるような証拠は何も発見されない。嫌疑不十分で釈放されることになったアレックスに、被害者家族であるドーヴァー家の父親ケラーは当然のように納得できるわけがなかった。彼こそが真犯人だと確信するケラーは、次第にその行動をエスカレートさせ、さらにはアレックスを拉致監禁し、あろうことか酷い拷問にもかけてしまう――。娘を愛するがあまり、正義と狂気の狭間をどんどんと暴走してゆく父親ケラー。互いの家族や事件を担当する刑事らも巻き込んで、物語は更なる悲劇へと繋がってゆくのだった……。2時間30分というなかなかの長尺で、しかもその間どこにも一片の晴れ間すら感じさせないかなり陰鬱な作品なのに、最後まで一切緊張感を途切れさせずに見せきるこの監督の手腕には素直に圧倒させられました。登場人物誰もが愛する者を救いたいと行動しているのに、それがどんどんと不幸の連鎖を生み、周りの人間を次々と悲劇のどん底へと引き摺り込んでしまう…。正直、見れば見るほど鬱になる、徹底的にいや~なお話なのですが(笑)、それでも最後まで惹き込まれ観終わった後はいろいろと深く考えさせられる作品でした。最後に姿を現す、「神に戦いを挑む人間」にして、全ての悲劇の“迷路”の中心に居る「絶対悪」の存在――。なんだか現代日本文学の最前線をひた走る作家・中村文則の小説をも髣髴とさせるその迫力に思わず驚嘆。正義とは何か?悪とは?正義のための悪行は許されるのか?サスペンス・スリラーとして充分なエンタメ性を有しながら、そんな哲学的で深甚なるテーマをも鋭く追求したなかなかの良品であったと思います。この監督の他の作品も観てみたくなりました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-04-28 01:06:17) |
3.《ネタバレ》 いやー濃密で非常に面白かったですけど、ラスト前で父親が犯人に銃を向けられたとこで素直に言うこと聞いちゃうのがちょっと腑に落ちないですね。娘を助けられるのは自分だけだと妄信してあれだけ覚悟決めて行動してたら銃の一発二発撃たれたとしても婆さんぐらいぶっ飛ばしに行くでしょう。あそこは有無を言わさず一発撃たれちゃう展開の方が違和感なかった。それと刑事があまりにも有能すぎなのに最後だけ都合よく父親のことを見つけられないってズルい。誘拐されたもう一人の子の話を聞いて慌てて飛び出したなら大体行きそうな場所は見当つくでしょうし、着信した携帯や修理道具だって処分できてない状態で痕跡ありまくりの状態でそれはないよ。面白かった反面最後が雑に感じてしまい残念。 【映画大好きっ子】さん [CS・衛星(吹替)] 8点(2015-04-16 22:19:07) |
2.《ネタバレ》 ギレンホール、『遠い空の向こうに』の好演以外はどちらかというと苦手だったんですが『ゾディアック』で硬派な渋みを見せたり、『プリンス・オブ・ペルシャ』で鍛えた肉体を披露しアクション・ヒーローを演じたり、幅広く頑張っているのを感じまして、今回の作品でのヒュー・ジャックマンとの共演に興味が向いた次第です。物語はもっとハードボイルドタッチでアクション寄りかと思っていたのですが、意外にも宗教と道徳を軸にしたストーリーで、中盤で神父さんの秘密が暴かれてから面白みが加速して行きました。正義に対する挑戦的なストーリー運びは『セブン』を思い出させるものがありました。「僕は本当はアレックスじゃない」「彼は来なかったんだ」という展開と、迷路描きの男と、アレックスの母とを結ぶ線がよくわからなかったのが残念。アレックスが乗ったRV車が木に激突するのは、事故というかおそらくは自らの意思でと思うし、犯人をかばっていた感じがする。「僕がいる時は怖がらなかった」って、あれも多分、彼としては優しさのつもりだったかも。「誰も悪者にしない」「他人の秘密をバラさない」という、一見良い行いに思えることが、誰かをひどく苦しめているし、悪を維持することに加担している場合があることを、上手く描いていると思いました。神父さんのやったこと、拷問をする主人公、正しいことをしようと頑張っているのに真相にたどり着けず役に立たない刑事、これらが話に深みを持たせていて、見応えありました。 【だみお】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-03-08 01:15:36) |
1.この映画のすごいところは、加害者と被害者が紙一重であるということであり、何もかもが結末と結びついています。出演者もすごいです。でも、統一性があるといいますか、誰かが妙に目立つことなく、調和が取れています。地味ですが、すごい映画です。 【shoukan】さん [映画館(字幕)] 8点(2014-06-07 23:29:57) |