29.《ネタバレ》 脳天を強く殴られたような強烈な映画で、その後味はともかく一度観たら死ぬまで絶対に忘れない、という意味での高評価です。確かに、薬物を打った時の創造性溢れる映像表現は面白い。でもそんなことはおまけに思えてくるほど、ストーリーそのものが放つ破壊力が凄まじい。この映画では、薬物依存者たちの物語は二つのチームに分かれます。お互いに薬物をけしかけ合って自滅した三人。孤独なゆえに依存症の蟻地獄に堕ちたサラ。その堕ち方こそ対象的でしたが、実は共通点が一つあります。彼らは、救う者がないまま、とうとう最後まで孤立無援だったということ。そもそもこの映画って、薬物依存者による破滅の物語ではなくて、薬物依存者に寄り添うべき良識ある者が誰もいないという恐怖、を描いています。絶対に堕ちるしかないという・・。だから主要な登場人物以外は人間に感情が宿っていない、というか全体的に空虚で無機質な感じがします。おばさんの集団、冷たい医者たち、ブラウン管の向う側で笑う者たち、レストランの男、、。そしてどことなく近未来的な空気があって、私は「時計じかけのオレンジ」を思い出しました。(もちろんお母さんの髪の色に電気ショックも、、) 全編通して、暗示的な海辺の風景が印象的ですが、それは夢か現実か、あるいは幻覚症状なのか、とても曖昧です。そしてその風景は、不思議と美しくなっていくように見えます。でも実は何一つ変わってはいません。それが美しく輝きを増していくように見えたのは、彼らが破滅して普遍的な正しい人生とは無縁になったから。海辺の美しい風景は、もう決して手が届かない幸せや夢の象徴だからです。 【タケノコ】さん [DVD(字幕)] 8点(2019-09-29 17:51:27) |
28.《ネタバレ》 分割画面、コマ送り、ヒップホップ・モンタージュ、スローリーカム撮影といったMTV演出が新鮮さと軽快さを生み出すが、それが却って終盤に向かうほど薬に慣れていく感覚に似ていて戦慄した。甘美な快感がやがて地獄へ真っ逆さまになるドラッグと同じだ。心の弱さ・寂しさを埋めるために尊厳すら捨て去り、ドラッグに全てを捧げた四人は、手を染めなければ別の結末もあったかもしれない。特につまらない日常を送る未亡人のサラは自分自身には何もなく、テレビ番組に参加する夢を持つことで生きている実感を浴びたかったのだろう(ただし、イタズラ電話ならともかく、痩せようと本気で努力しようとしない)。息子ハリーがドラッグについて言い返せなかったのも、何もない自分から逃げた同じ中毒者としてブーメランを突き付けられたからだ。ドラッグだけでなく、熾烈な現実を紛らわすためにテレビ、オンラインゲーム、過食、爆買い・・・何が何でも身に縋る夢のコンテンツは身近に存在している。一部の成功者を除けば、その他大勢はどこにでも転がっているコンクリの欠片だ。そんなもの誰も見やしない。自覚しなければ身を滅ぼしてしまう。足元の幸せに気付かず、目先の夢に簡単に飛びついて砕け散った四人に春は訪れることはない。叶わない夢をいつまでも見続ける。 |
27.おそらく低予算で作られた映画だろうが、アロノフスキー監督の実力がよく分かる傑作。カメラワークとこの音楽と役者陣の熱演で一気に見せる。芸術的反麻薬映画。美しい。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-11-15 23:04:52) |
26.《ネタバレ》 あらすじ欄にパブロン中毒さんが書かれた「これさえ見れば、あなたはヤクに溺れることは決してない!」とのコメントはダテではない、超絶鬱ムービーです。お彼岸名物「火垂るの墓」の如く毎年地上波放送すれば、日本国内において麻薬をやる人間は激減することでしょう。。。物語の顛末は衝撃的であり、それを見せるビジュアルの作り込みはハンパではない。怖くて気持ち悪いんだけど、とにかく見せる見せる。脚本・演出には観客の目を背けさせない圧倒的な牽引力があります。そして、この映画はキャラクター造型が非常に巧い。多くの観客が登場人物のいずれかとの共通点を見出せるように作られており、対岸の火事では終わらせないことが後味の悪さをさらに助長しています。地獄に墜ちるキャラクターのうち若者達は自業自得と言えばそれまでなのですが、それでも彼らは根っからの悪人ではなく、人並みに親を思う気持ちもあれば、将来の幸せを願う気持ちもある。ただ彼らは心が弱く、「ドラッグ中心の生活を続けているとどうなるのか?」という想像力に欠けているだけなのです。そんな彼らが行き着いたのは完全な破滅なのですが、マリオンが麻薬を抱えて眠りに就き、その脇には夢だった服飾のデザイン画が散らばっているというラストカットはドラッグというものの本性をよく表しています。しかし、そんな彼らもハリーの母親サラに比べればまだマシ。「麻薬でひとヤマ当てる」という完全に腐り切った発想ではあるが、それでも将来のための行動を起こしているのですから。一方サラは将来に向けての一切の行動を諦め、「大事なひとり息子がヤク中である」「自分自身もヤク中である」という事実からすら目を背けます。ひとり暮らしの老人である彼女の毎日はただひたすらに退屈で、高齢であるため将来に対する漠然とした夢も希望も抱けない。「何の生き甲斐もないのなら、せめて幻想に溺れたっていいじゃないか」と自分を許容してしまうのです。久しぶりに実家に戻った息子は母親の変化に気付くのですが、母親を幸せにする力を持たない自分では「せめて幻想は見させてよ」と訴える母親を止めることができず、帰り道で涙します。母親が破滅する様を見てしまったことのショック、そしてそれを止めることができない不甲斐なさ、このカットには胸が苦しくなりました。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2011-01-18 21:57:07) (良:2票) |
25.改めて言うまでもなく、これはやべぇっす!鬼気迫りまくってますよね、怖いっすよ!間違えてクリスマスに観ちゃったけど、作中に漂う狂気じみたリズム感に、ある種の恍惚のようなモノを感じてしまいました。やべぇっす。 【sava1100】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-12-27 21:23:41) |
《改行表示》24.《ネタバレ》 先頃、めでたく英エンパイア誌で落ち込む映画ベスト1に選ばれて、それで興味を持って見ました。 結論としてそうは落ちこまなかったです。というのは、これって自業自得だからじゃないだろうか。 ダンサーインザダークの自業自得じゃないのに地獄をたっぷり見せつけ、最後にほんとに地獄に突き落とすといった変質者的な悪趣味とはちがう。きわめて真っ当な作品と感じました。 ところでダンサーインザダークの私の評価がいつの間にか×になっていたが、なぜなのか今もわからない。理由くらい説明してほしいところだ。なんかの間違いじゃないだろうか。 ま、それはおいといて映像はなんか青臭い映像科の学生の実験映画みたいで、ところどころチープだが、それを補ってあまりあるのが女優陣の演技。エレン・バースティンといい、ジェニファー・コネリーといい凄まじい。ほんとに二三回はドラッグ経験があるんじゃないか?と思うくらいリアルな演技。たぶん日本の女優でこんな演技ができるのは皆無だと思う。多くはただのヒステリー女になってしまいそうだ。 特にジェニファー・コネリーの演技は冴えに冴え、無表情のときでさえ、ものすごい演技をしてしまってます。 しかし、清純女優だった?彼女がこれほどの汚れ役をやるとは。 こういうプロ根性のある女優も日本ではどれほどいるのか。 音は、ドラッグムービーなんだからもっとサイケにはじけてもよかったかも。 一方音楽はちとしつこい。 難はいろいろあるけど、妙な魅力がある作品。 【うさぎ】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-04-12 01:43:20) |
23.《ネタバレ》 四人の人生。四つの夢。四つの失敗。四つの鎮魂。繰り返される覚醒シークエンス。現実と幻覚と夢の交錯。幸福と孤独。善と悪。繰り返される覚醒シークエンス。子供のため、親のため、自分のため、恋人のため、野望と自分の人生の確認と。体を蝕むドラッグ、心を蝕むドラッグ。繰り返される覚醒シークエンス。崩れた夢への鎮魂。(この映画の斬新的コラージュを模した文体で) 【K-Young】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-01-15 21:09:19) |
22.映画を観終わってこんなに嫌な気持ちになった作品は初めて。でもこれは直視しないといけないものだと思った。日本で生活に困って覚せい剤に関わっていく人はいないと思う。大半が「かっこいい」「悪ぶって」から始まるのではないかと思う。あらゆる高校生に義務化にでもして見せたい思った。どんな反覚せい剤のCMより効果があるだろう。 【MIUMAX】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-02 23:53:04) |
【Michael.K】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-02-25 16:44:35) |
20.これは学校で見せるべき映画でしょう。でもRー15なんだよなぁ。 【θ】さん [DVD(吹替)] 8点(2006-12-18 19:16:48) |
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19.スリリングでショッキングだけど、後味は悪くない。何故か?繊細なカメラワークや、視覚効果も気持ち悪くない。何故か?練りに練られた秀逸な脚本と監督に拍手。 【Andrej】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-10-04 23:12:24) |
18.《ネタバレ》 この映画を見たブラッド・ピットの感想、「カウンターパンチを食らった感じ」という言葉がぴったりの映画だった。何ともショッキング。しかし、視覚効果といい、音響・音楽の入れ方といい斬新で吸引力があるため、観ている方はぐんぐんスクリーンに引き寄せられ、釘付けになってしまう。瞳孔が開くというのは、クスリを打てば死に近い、って事を意味しているんだろうか。エレン・バースティンの快演は言うまでもない。 【アンナ】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-07-17 20:36:33) |
《改行表示》17.何かに依存してしまう人間の悲哀を描いた作品。テレビしかり、ダイエット効果を促す薬、麻薬、恋愛などなど。演出もわざとらしく同じ映像を使い続ける。 淡々と描かれていく序盤から後半は思いもかけない展開に声を殺して見入ってしまった。 最後になるにつれホラー映画さながらの恐怖と、哀れともいえる儚さが心に染み入った。 【ひで】さん 8点(2004-09-20 14:53:33) |
16.お洒落臭い破滅。深みなんてなく、どこかヴァーチャルな雰囲気。センスのある若い監督が調子に乗って映像的に遊んでいる、というような感じが好きです(誉め言葉)。ルーティーン的に無感情に繰り出される映像の数々は、虚無を孕んだ現代的な特殊な悲惨さを醸し出している。目まぐるしく変わる回転の速い映像には、何がしかの思考を挟む余地もなく、絶望感が澱として沈むことなく表層でひたすら空転するようなイメージを与えてくれる。深みを持たない絶望は実のところ、深みのある絶望よりも救いがないものだったりするのだ。ともあれ、「私、シングルマザーだから仕事を選べないのよ」なんて言いながら、本当に役を選ばず、こんな汚れ役を体当たりで演じたジェニファー・コネリーは凄ぇっす。 【ひのと】さん 8点(2004-08-06 17:29:56) |
15.【Ⅴ.I.ッKU-S】さんを引用してさせてもらうと、『友達とかと見るよりも夜に一人で見た方がいい気がします。そっちの方が色々考えさせられてしまうので。』全く共感です。冷蔵庫のシーンとかは、並のホラー映画じゃかなわない。背景にドラッグという悪魔があるからなんだろうな。 【ホシ】さん 8点(2004-03-02 20:34:38) |
【腸炎】さん 8点(2004-01-29 15:33:59) |
13.悲しすぎます。見た後の絶望感や不快感を生み出す映像・音楽・展開!本当に素晴らしいです。愛する人のために他の男に抱かれるのは本当の愛?未だ自分の中で答が出ません。 |
12.主人公とその母親の対比が非常に良かった。何に依存するにせよ、「自分が悪い」とは微塵も感じさせないのが「中毒」の恐さなんですよね、きっと。映画にリアルを求めはしないけど、本当に腕はあんなになるのだろうか?それが凄く気になりました。 【ユウヤ】さん 8点(2003-04-22 23:46:13) |
11.見れば見るほどつまらなくなる、と同時に良く解らんけど面白くなる。こんな感じで4回連続で見てました。取りあえず最初のインパクトは凄かったです。あと背景とかセット好きでした。 【venom】さん 8点(2003-01-15 01:55:24) |
10.かなしい映画だった。 1、主人公がタクシーで、久しぶりに母親を訪ねた時、母親が痩せ薬を飲んでいることを知った時、主人公は「やつらは覚醒剤を処方しているのだから、やめろ」という。そして「テレビに出たからと言って、どんないいことがあるのか」と。このとき、主人公が貿易の仕事は(間違っていないとも言えないが)ウソで、本当はヤクの売人なんだと告白し、いっしょに止めようと言っていたら、良かったのか? 否。母親の答えは決まっている。「薬を飲むのをやめて、どうするの? また、以前の生活に戻るの?」だ。 2、薬を飲み始めた後の母親の日常を早回しで撮ったシーンがある。母親は主婦業もやっていなければ、おそらく仕事もしていない。本人も無為に過ごしていると感じている。しかし、誰しもが同じなのだ。誰しもが、早送りの人生を送っている。 3、母親には当然罪悪感はない。専門医が処方した薬に間違いはないと信じていたから。そして、くだんの専門医も一言も「薬は正しく飲んでいますか?」などとは尋かない。 4、母親は息子さえも美化する。当然だ。息子が立派な人であったなら、母親の人生もまた、正当化される。これは、労力を払わずして、報酬だけ欲しいと言うのと同じことである。しかし、この考えはあまりにもきびしすぎるのも事実だと思う。誰も自分の人生を生きていないというのが真実なのだ。ふと、思ったのだが・・・。むかし、戦争に行った人たちはあの戦争のことを、どう思っているのだろう? 原爆関係では、被害者の立場で戦争反対の旗色が鮮明だが、では外地で戦っていた人たちは? 彼らは侵略者だった。最近、戦争の話もめっきり聞かなくなった。複雑な背景があるだろうが、ばかどもが改憲論の尻馬にのっかているのも腹が立つ。アメリカさんは、戦争がしたくてたまらないらしいが、サイテーだね。戦争の時代に生きていた人も、やがていなくなる。 5、ところで、女性諸君に言っておきたいのだが、やせてることがいいことだという感覚は、完全にメディアに支配されているからね。楊貴妃はデブ女だったって、知ってた? つまらないことを色々述べてしまったが、1と2が、言いたかったことだ。途中カタルシスを感じないこともなかったが、よい映画だと思う。みんなに観て欲しい。ちなみにこの映画の予告編は、サイコーだった。予告編では、タイトルのフォーが4だった。 最後に、皆さんの感想を読んだ感想。みんな、なんでそこまで他人事だと思えるわけえ~? |