1.《ネタバレ》 アイルランドの神話をモチーフに使っているけれど、これは家族関係のなかで傷ついている子供たちに向けた物語。
日本で「子供向けアニメ」というと、無意識に「両親と連れ立って映画館にお出かけしてアニメを見る幸せな子供たち」が想定されているけど、海外の児童文学には家族との死別や両親の離婚などで傷ついた子供のためのグリーフケアに目を据えた作品も多い。これもそのひとつ。
登場する全員が、親や妹や残された家族を愛したいし愛しているし笑い合って過ごしたいけど、妻を・母を・嫁を失った悲しみがそれを妨げる。父親の悲しみや祖母の悲しみも、大人の観客にはよく伝わるよう描写されている。
問題児になってしまった主人公は、唯一すなおに愛し愛されている犬に再会するために、おばあちゃんの家から我が家に帰ろうとする。
その中で悪い魔女に妹をさらわれてしまうが、その妹を助けるハロウィーンの冒険は、瀕死の妖精たちを助けると同時に、大好きだった母との「ただしい別れ」につながり、やがて残された家族の再生につながる。
連れのリクエストで吹き替えで見たため、音楽にも重きを置いたこの作品の真価を捉えているか微妙だけれど、吹き替えの歌もよかった。
重く切ない話を、絵本のようにシンプルで装飾的な絵柄と美しい色彩でくるんだ、とても魅力的な話だった。