7.アバンタイトルは、染みのついた白地のぼやけ気味のストップモーション。その焦点が合うと、客船の船体を背景とした「赤」と「青」の紙テープである事が判るという趣向。中盤で犯人が電話をかける電話ボックスの赤と、背後の船舶会社の青による画面分割もまたクライマックスに向けたさりげない映画的伏線といえる。
タイタニックから時を経て、階級差別から人種差別へ、変わらぬ格差社会を料理廃棄の反復とアジア系給仕の悲劇を以ってシニカルに描出する批評性もまたさりげない。
有閑夫人らや、船員同士の何気ない対話もウィットに富んで面白い。
乗客のパニック防止の為に行われる虚ろなパーティを、説話的な必然性のみならず、まずもって処理班の緊張の場との対比として活かした映画的作法も良い。
D・へミングスの爆死が、会場に集った乗客を揺さぶることとなる。
そしてリチャード・ハリスの面構えも独白中継も良いが、曇天と波しぶきの中をローリングする豪華客船現物の重量感と生々しい迫力が断然素晴らしい。
ボートからの仰角視点と空撮を織り交ぜた臨場感あるロケ撮影があってこそ、爆弾処理のサスペンスが各段に引き立っている。