2.《ネタバレ》 「ハードボイルド」というジャンルそのものをダシに使った大人向け激渋喜劇。ブラック&ビターな人生ドラマに心地よく酔いしれました。とくに印象的だったのは妻の言葉です。『私はきちんと生きてきた。これからもちゃんと生きていきたい。だから汚さないでよ!』これは痛い。痛過ぎます。ぐうの音も出ません。主人公は確かに一度も銃を撃っていないかもしれませんが、妻を後ろから撃ち続けていたも同然なワケで。この手の裏切りは、火遊びやギャンブルの比ではない重罪と言えましょう。何人も、自分の人生が自分だけのものだと思ったらイカンのであります。また玉淀の台詞にも痺れました。『ずっと騙し続けられればそれは詐欺とは言えない』確かにそうかも。しかしそうは問屋が卸さないのが人生であります。ゴール目前にして、市川はすっ転びました。もう昨日までの平凡で幸せな日常はありません。全く別ものの明日が始まる事でしょう。でも男は黙ってやせ我慢。それがハードボイルドの流儀ってもの。タバコをふかす市川がラストカット。かつて当たり前だった路上喫煙が許されぬ世の中になりました。ハードボイルド同様、時代に取り残された男の行く末や如何に。