1.《ネタバレ》 誰よりも愛していた妻に先立たれた悲しみから、愛する妻の肖像画を描き上げることが出来なくなってしまい、アトリエを封印してしまった老人。寝床には今も妻の枕が置かれたまま。時折訪ねて来てくれる愛娘と孫娘は彼の心を癒してくれるものの、妻を失ったことによる喪失感は決して満たされない。
初老の身となった自分と照らし合わすと、老人の哀しみが直接的に伝わって来ていたたまれなくなります。老人、愛娘、孫娘、そして思い出の中に登場する愛妻。それぞれの表情がいいですね。台詞以上に語ってくれます。
絵の大好きな孫娘が封印された部屋に入り込み、そこで未完の肖像画を見つけ、老人は怒りにも似た感情を抱きながらも純粋な孫娘の「続きは描かないの?」という無言の問い掛けに戸惑いながら応える。それをそっと見守る愛娘。ここには意外性は全くありません。ある意味予定調和そのものといった展開。それでも感動します。激しいアクションや派手な演出とは全く無縁のアニメ。静寂の中から雄弁に語りかけて来る佳作でした。