4.《ネタバレ》 推理小説好きなら、観ておきたい価値のある映画「デストラップ 死の罠」。
原作はアイラ・レビンで、ニューヨークのブロードウェイで、延々ロングランした舞台劇の映画化作品だ。
この舞台劇は、ロンドンで大ヒットした、アガサ・クリスティの「ねずみとり」に刺激され、触発されて、製作された気配が多分にあるのだが、イギリス的な本格ミステリの構成とムードを持ちながら、裏側にいかにもアメリカ人好みの乾いた感覚が秘められているのだ。
この映画の演出は、ニューヨーク派の名匠シドニー・ルメット監督。
二幕仕立てという舞台構成を、そのまま映画に持ち込む事で、その構成自体をサスペンスに利用したところは、ミステリ好きを喜ばせる演出だと思う。
才能の枯れたスリラー舞台作家。
若者の持ち込んだ脚本が、あまりにも見事なので、それを自分のものにしようと計画を立てる。
そして、妻をも計画に誘い込み、自分の家で、この若者を殺そうとするのだ。
登場人物は、この三人と近所の奇妙な老婦人だけ。
そして、主な舞台は、この家だけ。
陪審員の控室のみで、あれ程の緊張感と迫力を創り上げた「十二人の怒れる男」の監督だけあって、この限られた場所、その大道具を逆に生かして、二重三重のドンデン返しを語って見せるのだ。
作家のマイケル・ケインも、妻のダイアン・キャノンも、ベストの演技を示している。
そして、青年はあの「スーパーマン」でブレイクしたクリストファー・リーヴだが、複雑な性格の役を陰影を込めて演じていて、実に素晴らしい。
こうしてみると、舞台で練られたミステリの面白さを、単に映像化しただけだと思われがちだが、ところが実はさにあらず。
プロローグに映画ならではのトリックが、はめ込まれているのだ。
実のところ、私はこの部分で完全に騙されてしまった。
憎い人だ、シドニー・ルメット監督。