5.《ネタバレ》 長すぎるシーンが多数あり、つまらない映画とジャッジされても仕方のない映画ではあるが、見事な作品でもある。
死んでいるはずの“武田信玄”という男をきちんと描き込めていると思う。
“武田信玄”という男は死んでおり、実際には描かれていないのに関わらず、本作によって“武田信玄”という男がどういう人間かを知ることができる。
描いていないのに描き込まれている、これを凄いと言わず、なんと言おうか。
「死せる孔明 生ける仲達を走らす」という三国志の有名な言葉があるが、まさにそれを描いている。
また、“影武者”の悲哀も見事に描きこまれている点も素晴らしい。
光を失った影の生き様、決して光にはなれない影の生き様が見事に光を放っている。
実際の息子勝頼よりも、赤の他人の影武者がより“武田信玄”という男を分かっていたのではないか。
勝頼自身はある意味で父“武田信玄”を理解しており、あえて父親という亡霊から逃れるために、父親とは真逆の戦法・生き方を選んだのかもしれないが…。
影武者が偽者だと分かるシークエンスがやや物足りないという欠点や、金と労力の無駄遣いとしか思えない長篠の戦い(迫力はさすがにもの凄いけど)が蛇足といえば蛇足であり、また史実と異なるらしいものではあるが、そういった欠点を補って余りある作品だ。