《改行表示》6.《ネタバレ》 「あなた軽いのよ」スゴく好きな台詞ですね。何とも艶かしいですし、含蓄が深いというか。軽いヴァンサンに対して、重いのは、躰そのものであり、それこそ愛でもあり、共に過ごした人生でもあり。今や「まぼろし」となった彼の存在を軽いヴァンサンを抱くことで逆に実感した喜びも含めて、二度のこの台詞には様々な感情を垣間見ることが出来ます。映画全体としても、マリーが実際、何をどのように考えて(捉えて)いるのかが少し判然としない(まぼろしを見る程に夫を今だ愛していながら、ヴァンサンと情事に耽ることも含めて)ことも、比較的単純な話に奥行きを与えている様に思われます。その意味では、本作のランプリングで一番良いなあと思ったのは、名状しがたい「有無を言わさない」感、だったかと思います(何とゆーか、細身なんですけど実に「凄み」のある系統の美人ですよね)。 ラストも、これ私大好きなヤツですね。ジャンにも見える人影を過ぎ越してゆく彼女には、我々とは違うものが見えているのでしょう。彼女は、もう戻らない。そう感じます。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-08-19 19:09:03) |
5.淡々と進むストーリー。それほど大きな内容ではないけど、ずっと見ていたくなる気持ちにさせる。主演女優さんの演技はいつみても素晴らしい。 【将】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-01-26 17:44:24) |
4.《ネタバレ》 シャーロット・ランプリング、好きです。いや、大好きですね。『愛の嵐』も良いですが、歳を重ねた彼女もまた魅力的。これは、まさに、シャーロット・ランプリングの映画。あの憂いを帯びた表情、1箇所だけ声を上げて笑うシーンが印象的。本作は「愛する人を失ったことを受け入れるまでの過程」を描いたと解説されているようですが、彼女は最初から受け入れていたと思います。ただ、その事実に対し、現実のものとして悲しみを感じられるようになるには、ただ受け入れるだけではダメなんだよね。その痛みをまず「実感」できなくては。受け入れられないから夫のまぼろしを見てしまった、のではなく、あまりにリアルなまぼろしが見えてしまうために実感できなかった、のだと思います。まあ、まぼろしを見ること自体、彼女の心理のなせるわざ、と言えますが、どちらが先というより、それほどまでに彼女は夫を愛していた、ということなわけです。最愛の人を亡くすことの痛みは、時間が経つほどにボディブローのように効いてくる。最初は頭と心が連動していなかったのが、次第にきちんと機能して連動してきてしまう。そして言い寄ってくる男には「重み」を感じられない・・・、分かるなぁ。この「重み」を感じないことが、痛みの実感の第一歩なわけですよね。見ていて苦しくなりました。残された者は、答えのない問いをし続けます。「私は彼にとって何だったのか。彼と私の時間は何だったのか」と。その答えは見つからないけれども、砂浜で声を上げて泣くことで、彼女はやっと痛みを感じたのでしょう。ラストシーンは、あのまぼろしを追い越して走り去った、と私は解釈したいです。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-04-06 15:55:22) |
3.《ネタバレ》 原題の『砂の下』ってどういう意図でつけたのだろう?邦題のまぼろしのほうが合っている気がしてしまった。『自分は夫を愛していたというよりも、良き妻である自分を愛していただけで、それを自分のアイデンティティーにしていたのかも…』と、彼女はどこか自分自身でそう思ってしまったのだろう。でもだからといって夫への愛がすべて偽りだったわけでもなくて、逃げた夫へあてつけるように、新しい恋人を作る。ここにはすごく複雑な感情があると思う。彼女はどこかで良き妻でないことを突きつけられるのが怖かったのかもしれない。良き妻を演じようとしたのには、姑への抵抗もあるだろう。意地になって良き妻を演じ続けて夫の水死体も見ようとした。でもきっと気持ち悪いと思っちゃったんだろう。いろんな気持ちに追い詰められたあげく、彼女は最後にある浜辺の影へとはしっていく。この影が誰かは分からない。きっと彼女も夫同じように追い詰められた挙句、こうして失踪するのかも、と自分は思った。 【リュカ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-07-28 10:55:52) |
2.《ネタバレ》 観終わっても尚、強い印象を残し、ふと思い出してしまう映画。きっと、この夫婦は今まで一緒に居ても、本当の意味でお互いの気持ちをぶつけ合ったり、分かり合おうとしてこなかったんだろうなぁ~と思いセツナクなった。少なくとも私には「いい夫婦」には見えなかったし、奥さんは最後まで旦那さんが何故あのようなことになったのか??その原因を考えることも、自分自身を振り返ることもなく現実逃避に走ってしまったように思えてならない。また、10年後、もう一度観たい作品です。 【うさぎの餅つき】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-07-22 15:03:07) |
《改行表示》1.《ネタバレ》 現実の男よりも、まぼろしの男を選んだ彼女に一言。これによって彼女は破産してしまうかもしれないし老後も不安だ。 普通は妥協するものだけど「愛」とはこのようなものなのかもしれない、、、 つまり、「愛」とは一歩間違えば、自分自身を滅ぼす諸刃の感情だということだ。 結婚式のときに、一生あなたは夫を愛しますか?というセリフがあるけど、いったいどれだけの人がこの言葉を真に受けて答えているのだろうか?本当の愛とは不変であり、相手がこの世からいなくなったら愛さなくなるのは、愛じゃないだろう。 人間は愛情を持つことで生きる実感を確認するが、自分を滅ぼす原動力もやはり愛情から発することがいかに多いことか・・・ この映画の彼女は愛する人のまぼろしを見ることで幸福を感じているように見えるが、私には1人の女性の転落のストーリーに見えてしまう。 親友や男の求めは、彼女にとって意味の無いことだったに違いない。彼女はこの世界でたった1人の愛する人間を失ったことで空想の世界に生きる道を自ら選択した。 【花守湖】さん 8点(2004-07-18 18:38:27) |