1.《ネタバレ》 「公益」(=戦争勝利)と「私益」(=恋愛成就)の齟齬、とまとめてしまうとありふれたテーマになってしまいます。が、通俗的な戦争恋愛モノと違って、G・クーパーが相手のもとに走る過程が明瞭に描かれていないところが演出の妙味だと感じました。これが逆に、「おまえが好きだ、おまえに会いたいんだ、今すぐ軍を抜け出すぞ!」的に惚れたはれたを露骨に表してしまうと、少しも美しくない。静かに、物憂げな表情で、しかし力強い瞳で「脱出」を決意し、悲運の再会をも冷静な態度で受けとめ、そしてラストでは優しく抱擁し、永遠の別れを甘受する。心理・行動描写の抑制が、逆に、その心の陰影・襞を強く感じさせます。もちろん、製作時間(70分程度)の制約下では演出は最低限度に抑えられてしまいますが、では時間が長ければよかったのかというと決してそんなことはない。増やされた時間で演出が過剰になり心理が饒舌に語られてしまうとすれば、それこそまさに本末転倒というほかありません。