《改行表示》18.《ネタバレ》 会社を定年退職し、さらには妻にも先立たれ、自分を管理していたものをすべて失った老人のお話なのですが、これが恐ろしく日本的な内容だったので驚きました。アメリカのホワイトカラーは個人主義でバリバリやっているイメージだったのですが、実際には日本のサラリーマンと同じく、組織への滅私奉公に人生の時間の大半を費やしているようです。。。 仕事をしている間にはそれなりにやることもあったし、家族と向き合わないことを正当化する言い訳もあった。プライベートで気に入らないことがあれば、妻のせいにしてればいいし。しかし、仕事を離れてそれらの制約条件がとっぱらわれた時に、それまでの人生への評価が冷酷な形で下される。以上、本作のテーマは普遍的なのですが、一方でその語り口は非常に型破りです。主人公は妻を失ってもさほど悲しまないし、疎遠になっていた娘との劇的な和解もない。娘の旦那は相変わらず好きになれないし、長旅に出ても感動的な出会いなどない。そして、主人公の偏屈な性格も一向に治らない。この手のドラマにありがちな展開は全て外してきているのです。。。 ハリウッド的な感動ストーリーに代わって描かれるのは、ひたすらに非力な老人の姿。その生き方のツケから家族にも友人にも恵まれず、その状況を変えるだけの力も度胸もない。ただ目の前にある孤独な余生を受け入れるしかない主人公の姿が、情け容赦なく描かれます。コメディとして作られているので直感的な衝撃度は低いものの、よくよく考えれば相当に欝な話です。。。 そして、オチの付け方も底意地の悪いものでした。アフリカの子供が描いた絵を受け取って涙する主人公。これを、主人公が人間性を回復した瞬間だと解釈する向きもあるようですが、私はそうは思いません。添付の手紙には、この子は英語が分からないという説明がありました。つまり、子供は主人公からの手紙の内容を分かっておらず、当然主人公の人となりも理解しておらず、恐らくは保護者から促される形でとりあえず描いた絵があれだったのです。主人公の涙は、こんなものにすがり付くしかない自分のみっともなさを嘆いたものでしょう。たまに小銭を寄付し、そのお礼に絵や手紙が送られてくるだけの関係。しかし、主人公が誰かから求められていると実感できる瞬間は、これしかないのです。本作では、家族を大事にしないと大変なことになるという重要な教訓が提示されています。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2013-07-06 00:14:47) |
17.《ネタバレ》 ラスト数十秒のジャック・ニコルソンの泣き笑いの表情にすべてを語らせる映画。そこまで観てやっと、今までの約2時間がそのシーンに至るための壮大な前フリだった事に気付く。内容は一応コメディなのだが、引退したサラリーマンの悲哀がこれでもかと無様に描かれるので、微妙に暗かったり痛々しかったりして笑えない場面の方が多い。しかし、少々退屈に感じたとしても、最後まで投げ出さずに観るべきである。晩年に差し掛かっても何者にもなれず、何事も成し遂げられなかった平凡な男に訪れる、ほんのささやかな救いを。「自分の人生に意味などあるのか?」、一度でもそんな自問をした事がある人なら、人生観を変えてくれる1本にもなり得るはず。ただし、終盤に出てくるキャシー・ベイツの裸体には人生観を狂わされるくらいのインパクトがあるので要注意。 【オルタナ野郎】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-15 00:46:06) |
16.《ネタバレ》 哀れな中年を描いたらピカイチのアレキサンダー・ペインですが、個人的には彼のフィルモグラフィーの中で最も好きな作品です。とにかく哀愁漂う可哀そうな主人公を観ているだけで笑えるし、また泣ける。そしてそう思えるのはジャック・ニコルソンの高い演技力によるとことが大きいと思います。なんだかんだ言って大御所は凄いですね。この主人公は所謂孤独というレッテルを張られた良くあるキャラクターなのですが、それゆえに非常に感情移入してしまう。だって誰だって自分は結局孤独だとか思ってしまう時ってあるじゃないですか(無いって人もいるのかな?)。だからこの映画は"アバウト・シュミット"であり"アバウト・アス"でもあるのでしょう。終わった後に自分が所謂独り者であることに戦慄を覚えましたわ。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-06-09 13:40:45) |
15.ニコルソンのおとなしい役って久しぶりというか初めてじゃないか?という感じでいろいろな感情を含んだ表情がなんだかケッサクで笑ってしまった。キャンパーのとことか。 【kagrik】さん [地上波(字幕)] 8点(2011-10-08 22:01:28) |
《改行表示》14.《ネタバレ》 この映画にある現実味。それは自分にとっても遠くない将来にあり得る姿であり、目を背けられない人生の厳しさでした。 どこかに救いを、夢を・・・と望む私の願望はことごとく跳ね返されます。 ジャックニコルソンが大好きな私には、たとえ映画でもこんな淋しい役を演じているのを見るのさえ悲しい。 けれど、このシュミットという男のとことん孤独な生活。それをここまでリアルに私たちに見せられるのはやっぱり彼しかいないと思う。 「最高の人生の見つけ方」といい、晩年の人生を想う作品を ニコルソンはやはり意図的に選んでいるのでしょうか。 次作はガツン!とまた、違ったテイストの役柄を選んでくれることを一ファンとして切に願います。まだまだニコルソンという俳優の 存在感に圧倒されたいから。 【nacky】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-02-13 17:28:29) |
13.《ネタバレ》 ラストシーンの、ジャックの顔がアップになるところで号泣してしまいました。数秒間ずっとジャックの顔だけなのに、思わず涙が込み上げてしまったような演技には心打たれました。あの絵一枚で、今までの長い人生が報われたような、あるいは許されたような…そんな思いで男泣きをする表情。あのシャイニングのジャックと同一人物とは思えないほど見事に役になりきっていました。ストーリーは次の展開が想像のつくノーマルなものでしたが、作品としての完成度は高いと思います。 【ClocheRose】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-05-15 03:50:06) (良:2票) |
12.《ネタバレ》 ジャック・ニコルソンの映画を立て続けに見てしまった。どっちもちょっとこだわりの強いおかしなおじいちゃん役。「シュミット」の方はさほど、こだわりが強いキャラではないが、朝のトーストの話とかキャンピングカーの話とか棺の話とか・・・ちょっとずつちりばめられている。そして途中で知り合った奥さんに・・・というシーンは何だか分けわかんないんだけど、一応伏線になっているのかなと思おう。「シュミット」の最後の涙は何だろうと考えた。ほんの気まぐれで普段しないような寄付をしてみた。特に何か見返りを望んだ訳ではない独り言を書くためだったのかもしれない。定年前の彼だったらしなかっただろう。それは無駄なお金にすぎないから。でも、彼は寄付をし、手紙を送った。そんな相手に自分の弱さや絶望感を救ってもらったのである。わずか6歳の子にである。太陽の下で「父」と慕うシュミットと自分の手をつないでいる何でもない絵である。しかし、自分の無力感を感じていた彼にとっては新たな希望を生み出すともに、家族への愛情を注げる相手を再び見つけた喜びでもあったのだ。何も期待していなかった相手に小さな子供に彼は感謝の気持ちで溢れたのである。と、そう思ったんだがなあ。どうです? 【蝉丸】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-06-25 23:34:59) (良:1票) |
11.《ネタバレ》 職を離れ、妻を亡くし、友を失い、ひとりになったウォーレン。孤独な現実が彼に突きつけます。お前の生きてきた証がこれだ。お前の歩いてきた人生がどんなものか判るだろう。最後の砦、娘まで奪われて失意のうちに帰宅する主人公。そんな彼を待っていたのが、援助をしている子供からの手紙でした。この手紙に彼は涙します。それは無意味に思えた人生を僅かながらも肯定してくれたから。ウォーレンの泣き顔が心に沁みます。そしてこの事は全てに通じる“どんでん返し”でもありました。「恵まれない子供への援助」は、主人公に心情を語らせる演出上の仕掛けのように見えます。チャリティ自体も結構インチキ臭い。でもそれは自分の“勝手な思い込み”でした。彼の援助は本当に子供を救っていた。彼は必要とされていた。それは本作の既定事実にも当てはまることに気付きます。妻と過ごした歳月は虚しいものだった。娘の結婚は間違いだ。主人公の人生は無意味だった。これらの結論は全て彼の“勝手な判断”です。いみじくも彼は結婚式でスピーチしています。「2人の道は交差した」と。人生は自分だけのものではなく、関わり合った全ての人のものでもあります。だから一人でその価値を判断することに意味はない。そんな気がしました。苦くて切なくて笑える「シュミットについて」。彼は30年後の自分の姿でもあります。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(吹替)] 8点(2007-02-08 18:04:30) (良:2票) |
10.賛否両論な映画だろうと思いますが、私は好きです。まだまだ、自分にとっては先ですが、でもリアリティを感じました、私も老後はこうなってしまうのかしらと。祖父母と同居していることもあり、色々考えさせられました。ここまでで、7点。個人的にジャックニコルソンが好きで、尚且つ演技も素晴らしかったのでおまけの1点で、8点献上です。 【キャラメルりんご】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-08-04 13:45:51) |
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9.この歳になると、何となく身につまされる感じだ。自分なりの人生、決して成功したと言える訳でもなく、多少の後悔はあるものの、どちらかと言えば合格点で迎えた定年。しかし、その日を境に、起こるハプニングとトラブル。おまけに知らなかった事実が明るみに。ニコルソンの絶妙の演技が、笑いと哀愁を誘う。冒頭の退職パーティーでの友人のスピーチに感激するような年齢になったなあ、と感慨にふけっていたが、あいつがまさか・・。気をつけるべきは、思い込みや期待しすぎ。それと頼りすぎ。まあ何といっても、常に生きがいは持たないと。あ、それと時々仕事を邪魔しにくるOBは大事に扱わないと。少なくとも態度だけでも。 【パセリセージ】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-05-14 16:04:32) |
8.《ネタバレ》 アメリカ地方都市の一種独特の「貧しさ」を描いている。シュミットは中の中(ネブラスカ州オマハなら中の上かも)、ロバータ(キャシー・ベイツ)は中の下の暮らしぶりで、どちらもとりあえず衣食は足りている。でも、生活のどこにも洒落っ気というものが見あたらない。シュミットの家は整然と片づいてて、まあ十分な部屋数があるけれど、インテリアは無趣味で味気ない。ロバータの家は雑然と取り散らかってて、人間味はあるけれど、統一は欠けている。人間関係も、表面的には愛想良くてお互い踏み込まないよう用心しているけれど、そこを踏み越えると突然無意味に性的になる。シュミットはキャンピングカーに招かれて旦那がビール買いに行ってる間にそこの奥さんに抱きつくし、ロバータは突然シュミットに混浴をせまる。昔から伝えられてきた生活様式や美的洗練の模範が無い場所で、男も女も、老いも若きも、何をどうしたら自分の人生に意味が生まれるのか分からない。シュミットの娘はワルではないが取り柄もない男と結婚してしまう。空疎で、安っぽくて、でも楽しげな結婚式! シュミットは、結局アフリカの子供に送金することぐらいでしか、人生の意味を見つけられない。子供から絵を贈られて急に泣けてきても手遅れ。働いて、生きて、誰とも深い結びつきを持たずに、後はなし崩しに死ぬだけなのだ。人生の芯のところが荒廃している。ま、日本も同じなんだけどね。 【哲学者】さん 8点(2004-09-01 02:17:17) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 面白い。不平だらけの主人公をジャック・ニコルソンが好演している。時にユーモラスで、時に悲哀に満ちたウォーレン・シュミットの言動に笑ったりほろっとしたり。最後にンドゥグが描いた絵を見て彼が泣くシーンでは、こちらの胸も熱くなった。それとは別に久し振りに見たダーモット・マルロニーのあまりの変貌振りには驚いた。変わり果ててしまっている・・ 【よっさん】さん 8点(2004-05-30 18:12:21) |
6.ジャック・ニコルソンも年取ったなぁ。でもやっぱりクセの有る役が似合ってる。「怒り」と「哀愁」が伝わってきて、何だかおかしい様な悲しい様な、複雑な気持ちになりました。ラストのニコルソンの表情にもらい泣き。 【robi】さん 8点(2004-02-05 04:08:18) |
5.寡作。実際の億万長者のバフェットと平凡に生きてきたシュミット。定年間際のお父さん達はズシッと来るものがあるんじゃないかな。 【バチケン】さん 8点(2004-01-27 00:31:54) |
4.なぜ66歳のおじさんの気持ちが痛いほど伝わってしまったのだろう。誰からも必要とされず、することもない。孤独とやり場の無い怒りと焦燥感。そういうものを自覚してる人にはズドンと来る。ラストはジャック・ニコルソンと同じペースで泣いてしまった。 【ラーション】さん 8点(2004-01-22 01:00:27) |
3.ジャック・ニコルソンに支えられ、とってもわかりやすいです。ただただ素直に感情移入できました。余計なこと考えないでスッと同化でき、要所要所でグッと来てしまいました。 【おしりはばとび】さん 8点(2003-06-20 03:11:00) |
2.無職の状態で、あちこち面接受けている時、平日昼間にスーツ姿で観に行きました。そんな自分の境遇がちょっぴり、主人公のさすらう心情と重なるようにも思え。老年にさしかかった時に信じていたものを失ったシュミットに、とことん密着して、元は一流企業の重鎮だった男が素っ裸の自分をさらけ出すようすを描いていく。という主旨に目新しさはありませんが、哀愁とユーモアのバランスがとても良かったです。音楽もいい。ただ、ラストに用意されていた「救い」が、ちょっと安易に思えて、嬉し泣きのシュミットのくしゃくしゃの泣き顔に、もうひとつ共感できませんでした。 【小五郎】さん 8点(2003-06-09 10:08:26) |
1.老後を如何に生きていくかと言った今日的なテーマを扱った作品で、私達すべてに当てはまり、実に身に詰まされる物語だといえる。定年退職したシュミットにとって、実績や名声といったものはもはや過去のものとなり、しかも人生の大半を妻任せで暮らしてきた彼にとって、老後を共に生きていく筈の彼女に先立たれるという試練が待ち受けていた。老後の生活設計に大きな狂いが生じて、その遣りきれない惨めさを否応なく実感する一方で、ある種の開放感を味わってもいる様子。このあたり、まさにシュミットが可愛げのある男性の典型そのもののように描かれている。経済的には困っていなくても、精神的な支えを無くした彼が、生甲斐を見つける為、自分探しの旅を始めるのが映画の後半部分。娘の元へと辿る道中記は、彼の心象風景そのものだが、このごくごく平凡で無邪気な初老の男を、J・ニコルソンが珍しく等身大の人間として見事に演じきっている。特に、泣き顔というよりはむしろ喜びを押し殺しているというラストの表情などは絶品だ。 【ドラえもん】さん 8点(2003-06-07 17:15:19) (良:1票) |