18.《ネタバレ》 よくもまぁこんな、ふてぶてしくも憎ったらしい女を創り出せたものだ。
もう死刑一直線、この女が殺したことは間違いない。最後はスカッと有罪判決を出してくれるのを期待して観てしまう。
犯人が意外な人物のドラマ、計画的な殺人トリックに見慣れたせいか、この自然体で直情的で、何がしたいのか解らない球磨子が新鮮に見える。裁判の席でも自分の感情を隠さない球磨子。憎たらしいけど、確かに、自分の無罪を主張するなら間違ったアピール方法。
観ていて球磨子が本当に犯人かどうか、解らなくなる。逮捕後の生存ルートに、どうにも計画性がなく、無罪が期待できない状況に自分を追い込むなんて、犯人だとしたら頭が悪すぎる。
絞首刑の夢で取り乱すシーン。豊崎が言うように「はずみで人を殺すかもしれないけど、計画的に殺すとなると…」こんなのを見ていると、球磨子が犯人じゃ無い可能性が、自分の中でも芽生えるから不思議。
映画の視聴者ではなく、裁判の傍聴人として、とても残念な判決。球磨子が保険金を手に入れられなかったのは、律子のせめてものファインプレーに見えたけど…そうだろうか?
この裁判の重要アイテム、靴とスパナ。靴が脱げていたことを怪しむ律子の法廷発言を「そんなのどうでも良いのよ頭悪いわね」と遮る球磨子。
豊崎の証言に取り乱して退廷させられた時、律子に「名演技だ」と言われ、顔の見えない方で口角ニヤリ。
この事件が自殺だったら、豊崎はどこから『ケネディ事件』なんて情報を仕入れて持ち出したのか。(※今回はじめて知った。当時誰でも知ってるような、有名な事件だったのかは知らないけど。)
やっぱり球磨子が「一人では生きていけない」とか何とか、福太郎に無理心中をしようと誘い、自殺の方法から手順なんかを指示したんじゃないかな。
目撃者の証言、福太郎の足の傷から、やっぱり球磨子が運転。怖くなってブレーキを踏まないようにと説明して、ブレーキの下に靴とスパナを入れた。目的は福太郎が急に怖気づいて助手席側からブレーキを踏まないように。
福太郎には2人の無理心中と思わせて、実際は自殺教唆。その実、世間からは事故に見えるように細工。だとしたら球磨子は相当したたかだ。
宗治君の証言で、球磨子の目論んだ『事故』でなく『自殺』にはなった。でも有罪まで持っていけなかったのは、律子の完敗に思える。
最後の打ち上げ。律子の腕にワインを浴びせるシーンは息を呑む迫力だった。
桃井かおりが悪女役をする作品が、他に何作品あるのか知らないけど、私の知っている桃井かおりの憎たらしさをストレートに出したのが、まさしくこの映画の鬼塚球磨子だと思う。それだけ自然で、私がイメージする桃井かおりそのまま。