1.「ココロ、オドル」という短編を見たことがある。山中に住む遊牧民らしき人々のところに浅野忠信がやってきて、そこで争いや理解が繰り広げられるという話だ。って、書いてて全然具体性がない。それぐらいに不思議な映画だったのだが、なんか忘れられない。この棘が引っかかったまま黒沢作品はその後見てなかった。で、これ見てみたんだけどその棘はさらに奥深くに入ってしまった。え、これピンク映画でしょ?なんでゴダールなの?あの浪人生の部屋なんてモロにゴダールっぽい。それ以前に全員キャラクターがぶち壊れてる。しかし、これで不思議なのは映画としてこの淫乱戦争が完全に成り立っているということ。ピンク映画だから当然カラミもあるが、この映画には性欲を発散させるものはこれっぽっちもない。むしろ発散するのは感性といっていいかもしれない。虚構とか破綻といったものが全部味方になっているように感じた。最後の格闘シーンなんて、これが意図して作られた絵だと考えると恐ろしい。何一つ無駄なカットも無かったし、違和感のある構図もなかった。あのテンションをカメラが追いかけているにもかかわらず、である。