1.《ネタバレ》 芸妓の皆様が集団で廊下を歩いているという、ただそれだけで醸し出されるど迫力。演出側も役者側も技術側も、すべてのイメージと照準がぴたりとあっているから、このような奇跡的な瞬間が生まれる。池上季実子は最初から最後まで衣装負け・美術負け・メイク負けしない存在感を放っており、「100年に1人あるかないかの芸者」という作中の台詞が誇張に感じない。緒形拳も、チンケな女衒に自分を位置づけつつ、実はいつでも極道にも刃向かえる牙を持っているという役柄を絶妙に演じている。桃若と珠子の席同士でのにらみ合いからキャットファイトに至るまでのシークエンスの緊迫感はもちろんだが、四人の芸妓が舞ながら会話を交わすシーンなど、演出の冴えも見事。