2.《ネタバレ》 <原作未読・映画版のみの評価>
はっきり言って後味の良い作品ではないし、内容的にも好き嫌いが露骨に出るだろうが、邦画のサイコ系ホラー映画としては間違い無く高い完成度である。基本設定はオーソドックスでスローテンポな展開でありながら、不思議と飽きないストーリーテリングの上手さと、中村獅童の怪演のおかげで作品世界に引き込まれてしまう。吉村由美のヤンキー演技も驚くほど自然w。
多重人格系である事を最初からストレートにバラしているし、演出にも取り立てて新しい工夫や意外性がある訳でもないが、サイコ系ホラー映画の正統な系譜としては十分完成されたものと言える。
アパートや建築現場、トイレ、学校といった日常の空間に立ち現れる非日常の狂気。その見せ方が上手いので、邦画特有の安っぽさが無い。
私もラスト辺りの展開には少し分からない部分もあるが、幾ばくかの謎を残したまま終わるのもまた良し。ひょっとしたら、全編すべてが少年時代の妄想だったという可能性もある。それはそれで十三が自己の殻を破って、いじめっ子に打ち勝ち、現れるはずだったもう一つの人格を「13号室という自我」の中に押し込めたという前向きなエンディングとも取れる。
何にしても、この作品が初めてとは思えない監督のセンスの高さに対する敬意と、今後の期待も込めて、おまけで8点献上。