1.《ネタバレ》 息子を愛したくても罪の意識からそれができない、母親を愛したくても自分の存在があやふやでそれができない。二人の心のすれ違いが、残酷なほどに痛々しい。彼の母親に対する愛情表現は、落ちるところまで落ちてゆく母親を否定もせず、黙ってただ受け入れること。母親にとってはむしろ、息子から罵倒されたほうがどんなにマシだったか。証言台の後、刑務所の面会室でお互いの存在の意味に気付いた時にはすでにドン底、もはや二人の間は取り返しのつかない距離が離れてしまっている。惨い、あまりにも惨い。昔の少年へ最後の手紙を書き終え、自らの過去にも決着をつけ、広大なミシシッピーを前に新しい人生を歩みはじめる彼がとても美しく、これからの寂しくも明るい未来が見えるようだ。寡黙で強く、どこか影を感じる主役ジョセフ・ファインズの演技がいい。唯一感情を露にしたシーンでは、包丁を片手にドスの効いた台詞が恐かった。透き通るような青空など要所のカットがとても美しく、また観てみたいと思わせる良い映画だった。