1.キャストをみて初めて職業俳優が多数出演していたとわかる。
そのくらい、キャストの佇まいや方言が現地に溶け込んでいる。
それは引きのカメラによる達成でもあるだろう。
街の一角を、後方に山を望む駅を、引いたカメラで出来る限り広域に取り入れ
その中で複数の人物を近景と遠景の間で動かし、絡ませるなど
非常に手間と労力のかかる贅沢な演出をしている。
人間と自然を一体のものとして画面に載せた、意欲的なロケ撮影だ。
オートバイに乗った男女が勢い余って生垣に投げ出される、
滑走する漁船から安岡力也が海に放り出される、といった危険なスタントも
引きのワンカットで収めるといった具合に、アクションも気合が入っている。
静かな森の中で次第に風が立ち上がり、ざわざわと枝葉が揺れ出す。
激しく降り出す森の中の雨は人工の雨か、それとも本物か。
これらの撮影はまさに神憑りと云うべきだろう。
太地喜和子の乗る小舟が、埠頭を歩く北大路欣也と並走しながら入港してくる、
その船側から陸側を望む横移動の緩やかな運動感。
柳町光男も、これをやっている。