36.《ネタバレ》 “FINAL DESTINATION”『最終目的地』。空港でアレックスのスーツケースに付けられる荷物タグに書いてます。『FINAL DESTINATION CDG(シャルル・ド・ゴール空港) PARIS,FRANCE』
後にシリーズ化され、『死のピタゴラスイッチ』なんて言われるようになりますが、実はピタゴラスイッチ放送開始前の本作。この当時のホラー映画って、ジェイソンみたいな殺人鬼物は出尽くした感があり、コメディや宇宙生物(CGが見どころ)と融合した変化球だったり、呪いや幽霊でゾッとする恐さ表現(出血少なめ)にシフトしていた感があります。そんな時代に本作は、グロい死に様を前面に出した、かなりド直球なホラーの成功作でした。
公開時の予告でテリーがバスに轢かれるあまりに突然っぷりに『あ、これ怖そう…』と思わせた作品。なのでビビリの私は劇場で観る勇気がなかったですね。
序盤の空港から飛行機事故までの一連の流れが出色の出来です。雷雨の中の離陸、巨大な飛行機の先端の剥げ具合、飛行機ドア横の傷と舐めたネジ、翼の煤け具合…空旅が苦手な人は、こんな些細な情報を自分から拾って『この飛行機大丈夫か?』って思ってしまうんですよね。
そこに追い打ちをかける不安要素。変な宗教家、墜落死を連想させるジョン・デンバー('97年死去)、たまたま開いたページがダイアナ妃の事故写真(パリ)、空港作業車の車体番号が666(ありえん)…不吉のフルコースですね。ちなみに出発前、アレックスがお守りとして敢えて付けてた荷物タグはJFK(空港)のものでした。ママに外されたけど。
飛行機墜落をアレックスの予知夢として、乗客視点で観せる演出も墜落の恐さ満点です。炎に巻かれ皮膚がパチパチと焼ける音、全身焼かれてもまだ生きてる様子が生々しく、肺が熱風で満たされる苦しさを感じました。実際の事故は遠影で小さく観せるのも旨い演出ですね(でも流石に、空港ロビーのガラスは砕けないだろう)。劇中では架空のヴォレー航空になっていますが、事故の経緯は'96年のTWA800便墜落事故をベースとしていて、なるほどリアルです。
トッドの父の逆恨み、ルートン先生がラリー先生を先行させたことで心を病むところとかも人間臭いですね。アレックスがクレアの写真とエロ本を見比べて何かを感じてるところもいい。事故直後、クレアだけ空港に迎えが来ない時の寂しそうな表情も良かった。クレアの部屋にエッフェル塔の置物が幾つかあって、お土産で貰ったのか、自分で買ったのか、彼女のパリへの思いもちょっぴり感じられました。トッドの兄やクリスタとブレイクの学校のマドンナ・コンビ。ずっとフランス語のラリー先生。飛行機に赤ちゃんと障害者。チョイ役もきちんキャラが立ってます。
最後は試写会の不評から半年後に撮り直したというエンディング(こういう事してしまうのが、ハリウッドの凄さだよね)で、タイトル回収…でも悪夢は続くよってホラーらしい終わり方。
うわ、メインのホラー部分について何も書けなかったな。けど『良いホラー映画観たなぁ』って満足感に満たされました。