11.《ネタバレ》 事前の予想と鑑賞後に持った印象との間に大きな乖離があった作品。事前には松本人志のシュールな世界観を2時間に拡大した映画だろうと思っていたのですが、実際のところ、極めて政治的な内容を扱った作品でした。。。 まず気になったのが、なぜ「6代目」なのかということ。大佐藤が日本国の守護神なのであれば、100代目とかの方がしっくりきます。そこで時代を逆算してみたのですが、すると初代大佐藤は明治政府が誕生した辺りであろうことがわかりました。すなわち、「大佐藤」とは近代日本を指しているというわけです。日本を守るという使命を持った主人公・6代目大佐藤は自衛隊のメタファー。彼はただ愚直にその使命を全うしているものの、世論からは邪魔者扱いを受けています。日本国民は大佐藤に守られているという事実を忘れ、騒音だの税金の無駄だのといった目先の問題ばかりに着目して彼を目の敵にしているのです。その父親である5代目大佐藤は高度経済成長の主役であった団塊の世代のメタファー。彼は許容量を超えて巨大化しようとした結果、弾けたバブルの如く命を落としました。4代目大佐藤は戦前日本のメタファー。彼は軍事力の全盛期を生きたものの後にその生き方は否定され、現在はボケて老人ホームでひっそりと暮らしています。。。 本作が興味深いのは、戦後民主主義を代表する「5代目」を否定し、戦後民主主義によって否定されてきた「4代目」を復権させたこと。ここに松本人志の思いが込められているし、本作が日本国内で酷評された理由も集約されています。本作は保守的な思想の下で製作されているのですが、左巻きの多い芸術界ではこれが受け入れられなかったようです。公開時、本作は激しい酷評に晒されましたが、それは本作の政治的背景の分析がロクになされないというアンフェアな状況下での酷評だったことは明記しておくべきでしょう。。。 私個人の意見としては非常に見応えがあったと思います。笑いを巧みに交えながら、かなり的確にテーマを突いているのです。ロクに戦いもせずに赤い怪獣(=北朝鮮)から逃げ回る大佐藤の情けない姿、敵を完膚なきまでに撃ちのめし、丸裸にしてもまだ容赦しないというスーパー・ジャスティス(=アメリカ)の戦い方などは、国際情勢をよく現しています。処女作とは思えないほどVFXや音響の扱いもうまく、タレント業と並行してここまでの仕事をした手腕は評価されるべきだと思います。ぜひ! 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-06-10 02:08:09) (良:2票)(笑:1票) |
10.インタビューの中で、だんだんと「稼業」の輪郭が見えてくるあたりのおかしさ。娘なので跡継ぎが問題で、とか、仕事の連絡のケータイでのやりとりとか。塀の落書き「くたばれ」や、投石、道の横断幕や立て看板など、昨今のきびしい状況も同時にだんだんと分かってくる。そうやって丁寧に裏ぶれたトーンを重ねた後で、ジュウと戦う場が描かれると、その馬鹿馬鹿しさもひとしおで、嬉しくなっちゃう。四代目の稼業華やかなりし頃の記録フィルムもいいし、間にはさまれる民間人へのインタビューは、どうしてあんなに自然なの? なんか違う質問しといて編集したのかしらん。変身場の係員へのインタビューもリアルだった。この映画、テレビの人気タレントの心象風景としても理解できるけど、純粋に贋作ドキュメンタリーの面白さだけで自立している。ラストは変に風刺がかってちょっとつまずいたが、許そう。ニラムの獣の、ササササと目玉をたぐり寄せるとこがかわいい。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-07-28 11:03:12) (良:3票) |
9.《ネタバレ》 松本人志・作としての正解。 基本的に筋のある物語ではなく、松本人志演じる大佐藤が巨大化して、大日本人と呼ばれる姿に変身し、襲来する怪獣と戦う、というシチュエーションを与えられた長編コント。 物語を期待して出向くと確実に裏切られます。 しかし、自分は元より堅実な物語を作るノウハウを今のところは持っていない人だろうと思っていたし、お笑い芸人・松本人志のファンなので大満足の逸品。テレビで彼や彼らの作るコントを楽しんでいた人なら満足のいく内容であることは請け合いです。 ただ、終盤大胆な表現の変化をなすのですが、それがメタフィクションを意識したものなのか、生真面目に作品然としたものを仕上げてしまう照れなのか、やはりそれ自体もネタなのか、どうにも判然としない。 笑いを狙ったにしては、その変化自体の方に意識がいっちゃうと思うんですけど。 【カラバ侯爵】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-06-02 10:04:15) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 たぶんね。。。。10年くらい経ったら立派なカルト映画として評されると思うんだけど、ごっつええ感じを見てた世代としては「トカゲのおっさん」とか「こうま(仔馬)」とか「みすずちゃん」とか「とみよしさん」とかついつい思い出して・・・なんかあの系統のコントの規模を大きくして映画作品にしただけじゃないか、と思ってしまう。でも作りは丁寧で2回・3回と鑑賞すると味が出てくる。自分なりに見所とツッコミどころが出てくるんだよ。なのでお笑い映画じゃなくカルト映画として8点計上。人によって相性は大きいと思う。 【ぷらむ少佐】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-03-25 00:54:44) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 (松本人志の笑いは好きですが、ファンというほどではありません。また、パンフレット等解説書類には目を通しておりません。そういう立場での感想です。)序盤はおとなし目、中盤から終盤にかけて徐々にペースアップ。淡々としたリズムがボディブローのように響いて、笑いを誘います。MAXは板尾の獣と、ラストの実写。笑いを噛殺すのに必死でした。そしてこの時、本作が映画である理由が分かったような気がしました。映画(映画館で鑑賞すること)の特徴は、不特定多数で時間と場所を共有すること。隣の席には他人がいます。このことに意味がある。満員でノリノリの空気が出来上がれば、笑いは笑いを生みます。そうでない場合は他人の手前、声を出すことをはばかるはずです。つまり“笑ってはいけない”というシチュエーション。これほど“可笑しい”状況はありません。どちらにしても、映画館でしか味わえない笑いです。タイトルに“大”が付くことで若干ニュアンスが弱まっていますが、監督の日本人観を描いているのは間違いなさそうです。さらに映画論も垣間見られます。主義主張は伝わってきますし、どこを切り取っても“松本人志”を感じることが出来ます。本作は映画。それも映画館での鑑賞に意味がある映画です。正直、鑑賞直後の満足度はさほど高くありませんでした。でも思い返すとニヤニヤしてしまいます。六代目大佐藤の一挙手一投足が、あの受答えが頭から離れません。最後に公開直前に放送された番組『ゲツヨル』(5月28日放送・NTV系)について。この番組での松本の不遜な態度や、インタビュアーのヨイショぶりは目に余るものでした。何でこんなに自分でハードルを上げているのか不思議なくらい。しかし、これは本編に対する壮大な前フリ。この番組でカチンときた人ほど本編で笑えると思います。 【目隠シスト】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-06-05 17:50:04) (良:1票) |
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6.《ネタバレ》 巨大化して獣と戦い地球を守る家系に生まれた6代目が主人公 正義の味方だか世間には指示されず、結構いいかげんなとこの ある普通の弱さのある主人公の毎日が笑いになっている映画。 正義の味方のくせに、女房にも逃げられ、自分より強い奴からは逃げ 金の為にスポンサー広告を体に貼り理想と現実のギャップを埋めようとは しない愛すべきヒーローを冷めた笑いで描いている。 普通に面白い映画だった。賛否はあるだろうがほとんどがあえて難しい見方を してみたり、松本が嫌いだからと言うところに原因があるのは残念 【東京ロッキー】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-06-03 00:42:41) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 まっちゃんはたぶん、見た人を笑わそうと思ってこの映画を作ったんじゃないんじゃないかな?当事者同士は何かしら宿命があって、泥臭くも一生懸命戦っているんだと。それでいいんだと。だからアメリカはでしゃばるな。ウルトラマン気取りかよと。寒いんだよ。しらけるんだよ。 こんな感じのことをまっちゃんは表現したかったんじゃないのかな?と個人的には思いました。 まあ、まっちゃんの思いはどうあれ、私はこの映画けっこう好きです。おもしろいのかどうかは置いといて、全体通しての哀愁漂う雰囲気がいいね。淡々としたノリも私好みということで、8点。 【jojo】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-12-10 01:42:59) |
4.《ネタバレ》 予備知識なし、レビューも一切読まずに観た。松本人志の笑いは大好きだが、どちらかといえばタケシ派の私が、かなり楽しめた作品。CGも結構緻密だし、大日本人への変身シーンはかっこいいとさえ思えた。獣のデザインもセンスのあるバカさかげんだし、ヴァンダレイ・シルバみたいな赤い獣も好きだ。四代目の、古い写真や映像のなかの丁度良い巨大さ加減や、手形、草履などの描写でわくわくするような痕跡をのこすなど、かなり細かい作業をしていると思う。一方、人間大佐藤の悲しいオッサンぶりが良い。スポンサーに話題の会社をもってきたり、TV欄の深夜枠の「大日」とう表示が悲しくて笑わせる。しかしラストで全てを思いっきりぶち壊してしまうのは、お笑い芸人の性か・・・気持ちは想像できるが、映画作品としては、やってほしくなかった。でも、こちらのレビューで何人かの方が触れておられる北朝鮮とアメリカと日本の比喩では、という解釈には脱帽。 【ブタノケ2】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-01-19 18:13:31) |
3.《ネタバレ》 「映画の概念を壊したどのジャンルにも属さない映画」まさにその通りだと思います。 途中CGから実写へ変えた監督の意図は、アメリカの北朝鮮に対する攻撃(経済制裁)をリアルなCGでなく実写にする事で笑いたいけど笑えないギャグにしたかったんだと思います。 よって、北朝鮮をイメージさせる赤い獣がアメリカンヒーローにボコボコにされる所で大笑いした観客とドン引きした観客とでは評価が分かれると思います。 もちろん私は後者です。 【ありあ】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-08-03 16:33:17) |
2.《ネタバレ》 ん~これは賛否両論でしょうね~。 面白くない人は全く面白くないでしょうし。個人的には松っちゃんの特徴的な標準語喋りだけでもう面白いんですけど。 全体を通して館内ではビックリするくらい大爆笑してた人もいたし、クスクス笑ってる人もいたし、???してる人もいました。そういった意味で笑いの基準は十人十色だと思うし、万人が受け入れる笑いというのは実はそんなに面白いもんではないと思います。 かといって本作は松っちゃんが以前テレビやDVDでやっていたビジュアルバムや一人ごっつ程の先鋭的で独創的な、観る側を選ぶ、ある意味敷居を高くした笑いとは思えないですし・・・。全編に漂うあの空気感というか、シチュエーションが面白いと思えなければダメかもしれませんね。 自分としては終始ニヤニヤしながら観てましたが。 残念なのはラスト、急速なテンポで安っぽい特撮実写に切り替えて終わらせたこと。 あれで多くの人が???のまま置いてきぼりを食らう羽目になったかと思うので1作目としてはあの手法はやらない方が良かったかもしれませんね。 なんにしても2作目、3作目と継続して作り続けて欲しいと思います。 【トニー】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-06-10 09:41:36) |
1.《ネタバレ》 ジャーナリストの森達也さんが書いた、プロレスラーについての本を読んだときと同じような感覚がありました。体を酷使し、怪我をしたときの補償もなく、視聴率とお金にからめられて・・・。大佐藤は自分の仕事を伝統・文化だと思っているし、フェアプレー精神で戦っているけれど(目玉投げる獣が目を洗っているときはチャンスなのに攻撃しない)世間からしてみたら「ショー」みたいな感覚。それでも戦い続ける。最後は自分の仕事の関係者たちからも裏切られて死んでしまって死後の世界でも戦い続ける。(という私の見方です。)死んでまで戦うのが彼の運命なんですね。切ない映画でした。出てくる獣はみんなデザインがすばらしく個性的でした。あと、昨今のテレビへのクレームについて恐らくまっちゃんが抱いているであろう不満も、笑いに昇華されていました。 【キュウリと蜂蜜】さん [映画館(吹替)] 8点(2007-06-02 16:06:48) |