7.《ネタバレ》 退屈だけど、凄く良い映画だと思う。
この「ブレードランナー」ほど観客の視覚に全てを委ねる映画は無いだろう。
公開当時からスゲエ綺麗なのに、回を増すごとにより画質が向上するんだから凄い。
冒頭の迫力ある近未来の情景。空からは燦然と輝く美しさがあるが、デッカードたち人間が住む地上は混沌とした街。言語と人種が混じり、食文化もごっちゃごちゃ。
酸性雨が降りしきる喧騒な街だが、そんな街に侵入者が見えない恐怖となって潜む。
危険を犯さなくなった人類は、自分たちの代わりに働くレプリカントという機械生命体を産んだ。
彼らは太古の奴隷がそうだったように、散々コキ使われ歯車のように捨てられる消耗品だ。労働、風俗・・・人間はどんどん堕落する。
だが「レプリカント」たちはただの「歯車」じゃない。
人間のように感情を持ち合わせ、人間以上に生きたいと必死に抗う生き物なのだ。
人間が忘れてしまったものが、彼らの心に宿っていく。
そんなレプリたちに不満が溜まり限界が来れば、反乱が生じる。
6人のレプリは必死に生きようとする。
1人、また1人・・・それをあざ笑うかのようにレプリは追い詰められていく。
それを破壊するために追う「ブレードランナー」のデッカード。機械の脚で駆ける者を生身の脚で追う、それが彼らだ。デッカードの使命は同胞の仇か、街の平和のためか、それとも上司の命令に従う忠誠心からなのか。
そんなデッカードが目の当たりにする人間のエゴ。
人間と見分けが付かない感情を持ち合わせる彼らを追う内に「必死に生きるレプリを俺たちは消そうとする。人間の秩序を乱す彼らがおかしいのか、それとも人間の秩序で勝手に縛り付ける俺たちが間違っているのか」とデッカードを葛藤が襲う。
そしてデッカードを優しく包み込むレイチェル。
デッカードは走る。レイチェルたちを守るため、何より仕事として義務を果たすために。
最後の戦いにおけるレプリカント・ロイ・バッティの行動。
デッカードの人間の生命の尊さに気付いたからなのか、それともレプリカントと同じ何かを感じたからなのか、それは解らない。だが、ロイは鳩を殺さなかった。それは彼らが本当は命を思いやる生き物だからだ。だからこそ、人間であるデッカードの命を感じたのではないか。レイチェルを理解してやれる唯一の「人間」に。