2.混沌のイラン。自由なき国で自由を求め、健気に懸命に生きていく少女の青春時代を味わい深いアニメーションで描き出した独特な映画だった。
イランという国の包み隠さぬ“実情”を知る日本人なんて、ほんとはほとんどいない。
報道などで伝えられる情報など、ほんの一側面でしかなく、それでその国のことを知ったつもりになることは、とても愚かで、危険なことだと思う。
作品中で、主人公の叔父さんが言うように、大切なことはとにもかくにも「知ること」だ。
そういう意味で、一人の少女のまさに等身大の目線で描き出された本作は、とても興味深く、映画として魅力的だった。
独裁的な政権の下、あらゆることを抑制され、あるべきはずの「自由」はそこに存在しない。
しかし、生きる環境がどんなものであれ、少女はひたすらに青春を謳歌し、一人の女性としてあるべき人生をどこまでも追い求める。
混沌の社会環境にあるからではなく、世界中の国で有り得る普遍的な少女の姿そのものに純粋に感動する。