1.《ネタバレ》 この作品のストーリーは簡単に言ってしまえば「青い鳥」。秘めた情熱に身を焦がし、求めるものを命がけで求めるが、実は家にあったのです。でもストーリーはさほど重要ではないと思う。行動の理由もいらない(忘れる)あれば下世話になったかもしれない。あの手紙の言葉通り「感じ」ればいい。誰一人として、醜い欲望に生きている人がいないのが、また美しい。「沈黙」が雄弁である、と気づいたのはちょっと大人になってからです。「沈黙の音楽」や「無い香りを聞く(ユリの庭)」これはそんな映画であると思う。いつも夫の帰りを待ち、話さない事に何も言わないエレーヌの気持ちがなかなか分からなかったけど、ラストの手紙で氷解しました。彼女も静かな情熱の炎を燃やしていたのだと。表に出さないからといって、冷静なのでも感情が乏しいのでもない。内に秘めた分だけ激しい時もある。手紙というのがまた良い。文字を書く、という行為はその人の体温を感じさせ、肉筆は間接的に「触れる」事になるから。メールなどの文字って結局「記号」だもんな~;艶がないのです;この映画はとにかく「間接的」に情熱を描いている。原の妻である自分が裏切る訳にはいかないので、日本の少女が別の女性を通じて彼と契りを交わした事やエレーヌの深い愛情もマダムを通して彼は知る。(米国映画あたりなら、命がけで日本にやってきた男と一夜過ごした少女が彼の子供を産む、なんて話になっていたかもしれない;それでは、あの美しさが台無しになる;)日本の役者さん達は皆すごかった。台詞も少ないのに、あの存在感と雰囲気を出せる俳優はそうざらにはいない。映像と音楽の美しさと、内に静かな情熱を燃やす登場人物に酔いしれました。