1.《ネタバレ》 子どもというのは、弱くて、勇気がなくて、ずる賢くて、残酷なものだ。アミールの姿をみて、自分の昔の姿を思い出した。トラブルからは逃げ出し、嫌なことは見ないフリをして、自己の責任を何かのせいにして回避するような子どもだった気がする。
アミール同様に、自分も普通のつまらない大人になってしまった。今でも自分には何か大切なものが欠けていると感じるときはある。本作を見ることで何か少しは変われるような気になれる。
どんなに遅いと感じても、確かに「やり直せる道はある」のかもしれない。
「友情の大切さ」「勇気を持つことの素晴らしさ」「自己に誇りを持つこと」「恥を知ること」という大切なことを考えるきっかけになるのではないか。
映画を見たくらいで、簡単に影響を受けるほど自分は単純ではないが、そんな自分でも何かを感じさせる「じんわりとした暖かさ」を持った映画だ。
また、人間としての“弱さ”は、逆に言えば“強く”なれる可能性があるとも感じられた。アミールもアミールの父も自分の“弱さ”を認めることができたから、あれほど強くなれたのではないか。親友の妻を寝取ったアミールの父親もアミール同様に“弱い”人間であるのは間違いない。パキスタンに向かうバスの中で彼があれほど強くなれたのは、自分の過ちを知って、自分の恥や弱さを痛感しているからなのではないか。
後編のカブール侵入は大変な決意や苦悩が必要だと思うので、もう少し葛藤を描きこめたらよかった。
人間は強くなれる生き物かもしれないが、それほど“強い”生き物ではない。死ぬ危険性を冒すのだから、彼の“弱さ”を今一度感じさせてもよかった。“弱さ”を描くことによって、彼の“強さ”がさらに際立つはずだ。
残酷なシーンは少々あるが(リアルさがないように配慮していると思う)、子どもにも見てもらえるように非常に分かりやすい映画になっているのが好感触だ。
時代背景やタリバン、アフガニスタンの知識を問われるようにはなっていない。
もちろん子どもだけではなく、大人にも見てもらいたい良作だ。
「友情」の象徴でもある凧揚げが見事に印象深く描かれている美しい映画である。