6.《ネタバレ》 数ある藤沢作品の中で最も好きな『山桜』が映画化された。
野江の雰囲気がどうも田中麗奈ではないような気もする
(彼女なら、ちゃきちゃきのおきゃんな町娘のイメージ)。
手塚弥一郎はというと、原作には「男にしては優しすぎる目元」とあるので
若い時の中村雅俊などぴたりだったんじゃないかと思う。
とはいえ、予想外に東山紀之はよかった。
寡黙で正義に篤く侠気のある役どころがはまっていた。
今後が非常に楽しみだ。
食事時の礼儀作法・季節感を楽しむ気持ちのゆとりの有無で、
家格あるいは人格の違いを表していたり、
大目付に出頭する手塚と米倉(この人も正義の人であった)の視線だけのやり取り、
静かに逼塞していた手塚の母堂が、野江が来るようになり扉を開け放したり、と
そこかしこに隠してある旨み、みたいな物を探すのも楽しかった。
冨司純子はさすが。画面に登場するだけで暗がりに明るい光が差すかのようだった。
それも、野江が訪ねてきた時はちょっとやつれている感じであったが、
次にはふっくらしたと母性が表れていた。
全体としてよかったが、一青ようの歌は私にはちょっと合わなかった。