3.《ネタバレ》 門前家を去る間際、おろちは言います。『あの姉妹を化け物にしたのは門前家の血ではないわ。化け物を生んだのは人間の執念』。美しい姿を映画のフィルムに焼き付ける女優という仕事。絵画の中の母も決して年を取ることは無い。門前の女はずっと“永遠の美”に縛られて生きてきたのだと思う。叶うはずの無い祈り。祈りは執念に変わり、皺と弛みは醜い痣に変わった。老いに対する恐怖が、門前の女に掛けられた呪いです。そしてその呪いは体だけでなく心も蝕んだ。姉妹の秘密を知ったときの理沙の心情は如何ばかりか。彼女の憎悪は、和沙の何に対して向けられたのか。姉が門前家の呪縛の外にいた事実よりも、姉が母の愛情を一身に集めた理由に妹の心は砕けたのだと思います。最初から自分は“見捨てられた子”だった。母・門前葵は自身の想いを、血を別けた子ではなく、他人の娘に託したのだから。門前葵は自身の複製を作ることで永遠の美を望んだとも言えます。恐ろしい。恐ろしいが、これが人間の性だとも感じます。門前葵に共感はしませんが、彼女の思考は少し理解できる。そしてその真実を一草ではなく理沙に告げた点に、彼女の母の一面を垣間見た気がします。木村佳乃も中越典子も、自分が今まで観た作品の中では出色の出来。作りは、ややステレオタイプな印象もありますが、梅図かずお原作であることを考えればコレくらい分かり易くていい。おろちは、ちょっと喋り過ぎ。漫画と違って繊細な表現が可能な映画の特徴を活かして欲しかったと思います。音楽も素晴らしく、邦画ホラーという括りなら、十分な佳作かと。