1.「愛の不条理」なんて言い切ってしまうと、途端に安っぽく聞こえてしまうが、でもカサヴェテスの映画って、そう言える。人は本当なら愛の中でこそ安らげるはずなのに、なぜ愛とリラックスは同居できないのか。そんな問いが、いつも聞こえてくる。そして登場人物は、またはしゃぐ。ボーリング場での男あさりは序の口。動物たちを家に連れてきたりして、白眉は30秒で夫や娘を笑わせようとする場。くつろぎを求めて疲れ果ててしまう、という彼のモチーフのエッセンスシーンだ。おどけふざけプールサイドでさんざんはしゃいだ後、後ろまわりでプールに飛び込むまでの30秒、あのまったくコミカルでないジーナ・ローランズが演じるだけに、その痛ましさと言ったらない。「演じること」のモチーフは夢の中のオペレッタになる。どの場もキレよりコクで勝負の監督。本作には姉と弟という神話的構図があり、家畜たちとの嵐の場なんか。神々しくすらあった。カサヴェテスは、じたばたしている人間を、ほとんど神のように尊敬を込めてコッテリと描く。人間のそういうところが好きなのだ、とでも言いたげに。