18.《ネタバレ》 組織全体が悪に染まっている中で、どこまで孤独の中、正義を貫けるか。実話ベースということもあり、大衆受けを狙うような展開はほとんどないが、その分太く仕上がっていると思う。 ■展開について一言いうなら、最初に撃たれたシーンを持ってくるのは「カリートの道」でも使われているやり方だが、展開が先に見えてしまってどうなんだろうかとも思った。結果が見えない方が不条理さが増していい気もした。 ■この映画を「冗長」「面白みがない」というのは、要するにセルピコの行動を「悪習のある組織に頑張って抵抗してます」の一言でまとめてしまっているからであろう。それはセルピコに対し「本当に偉い。よく頑張ってるね。大変だっただろう」と口では言いつつ結局全く助けてくれない上層部と同じ見方のような気がする。 ■賄賂を受け取らないという、一歩外に出て考えれば「あたりまえのこと」も、その組織内で誰もがしていることであれば「受け取らないお前はおかしい」「仲間を売るのか」と徹底して敵視され爪はじきにされる。しかし、問題が賄賂だから誰もがセルピコに肩入れするが、しかし多かれ少なかれこうしたことはどの組織でもあることではないだろうか。 一時期「KY(空気読め)」という語が流行ったが、あれはまさに「何が正しいか」よりも「組織の風習を守れ」を重んじている人が非常に多かったということであろう。今でも「ノリが悪い」「頭の固い奴」という非難は健在である。この映画に感銘を受けた人は、同時に自分が「悪習に染まった警官」の側ではないかを振り返ってみてみるといいであろう。 【θ】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-12-16 23:46:39) (良:1票) |
17.《ネタバレ》 警察内の汚職とたった一人で戦った実在の警官、セルピコの半生を描いた作品ですが、自ドニー・ルメット監督らしくその視線は実に冷ややかに主人公を写していると思います。この映画は結局ヒーローには失う物を持たない一匹狼しか成れないということを言ってしまっていると思います。セルピコは付き合っていた彼女にも言われた通り、どこまでも自由にしか生きられない男です。だからこそ彼は警察内部の汚職を暴くという常人ならば成し得ないことをやり遂げた。 逆に汚職に手を染めている警官の中には本当に家庭を大事に思っているからこそ、家族を養っていかなくてはいけないからこそ、賄賂を受け取っている人たちもいる。まあ欲望の赴くままに集金しているクズの方も沢山いたようですが。 証言したことで警察内部で村八分にされ、同僚に殺されるかも知れない恐怖がセルピコを襲うシーンの緊張感は並々ならぬものがあります。今見ると自由人=ヒッピーのファッションというのはやや単純すぎる気もしますが、当時としては斬新な主人公だったのだと思います。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-06-23 22:40:33) |
16.「さあ、セルピコ本人になり切って演技してやるぜ!」といった感じのアル・パチーノと、幾何学的に人物を配置しあくまで冷静な語り口のシドニー・ルメットの演出が、噛み合っていると言えるのかどうなのか、気になったりもするのですが、やはりこの作品に圧倒されるのは・・・いわゆる勧善懲悪の作品では無いこと。と言っても、「善が敗れる」ことで我々の怒りを呼び覚まそうとするような作品は、所詮、一種の勧善懲悪。本作は根本的に異なっていて、まずそもそも、警察内部の腐敗ぶり、というか、やる気の無さが、もう映画開始いくらもたたない辺りから、これでもかと描かれまくる。ある意味、味もそっけもないほど。要するにここは、市民感覚とは別世界。この異常な世界に、溶け込むことができない異邦人としてのセルピコが描かれる、その「孤独」がどこまでも描かれていくのが、本作のスゴさですね。かなり実際の事件に取材した内容ではあるらしいのだけど、あくまで映画を観ている間はその理不尽な世界観に圧倒され、そしてラストであらためて実話であることが強調され、2度ビックリ、という作品。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-11-12 10:34:53) |
15.《ネタバレ》 アメリカでも賄賂を取らない警官の方が多数派だと思いたいけど、フランク・セルピコほど執拗にそれを糾弾した警官は稀有かもしれません。セルピコと言う名前は今や清廉潔白の代名詞みたいになっていますが、この映画では良く言えば変人、どちらかと言えば偏執狂的なセルピコの姿を包み隠さず描いていると思います。プライベートで交際している女性にエゴイスティックな態度を見せるところなんか、名匠S・ルメットの冷徹な映画の撮り方に感服してしまいます。この頃のA・パチーノは、男の眼から見てもほれぼれとする様な美貌でして、この美顔と鼻にかかった独特の声が何で今みたいなとてつもなく深い皺顔とだみ声になってしまったのか、人生とは残酷なものですね。 最近のハリウッド警察映画に登場する内部監察の刑事は、たいていはヒーローの邪魔をする嫌な悪役というパターンが多いのは興味深いところです。この映画のように真正面から警察の不正を告発するのは今じゃ受けないのでしょうかね。 【S&S】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-11-03 12:07:17) |
14.今そこで起きている出来事として何ら違和感のない作品です。 映画人たちが映画に込めるメッセージが如何に無力化を突き付けられます。 【こね】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-04-23 22:56:30) |
13.《ネタバレ》 オープニング見る限り嫌な感じで終わるのかなと思っていたので、最後証言出来て少し救われた気分になりました。しかしなぜセルピコがあれほど強い意志を持って警察内部と戦い続けられたのか少し疑問に思いました。普通の人では屈してしまうだろうし、何度も警察を辞めればいいのにと思ってしまった私には到底無理な話です。これが実話に基づいているとは恐ろしい話です。 終盤の病室のベッドのシーンのアルパチーノの演技は良いですね。一瞬見せた悲しい顔にはグッとくるものがありました。それ以外にも感情的になるところは迫力があります。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-12-24 01:24:05) |
12.警察の実態はともかく映画として、アル・パチーノ!として観ると、純粋にかっこよく、そして面白く、展開も時間をまったく感じさせることもなく、とても良い作品であったと思います。これは、良い。 【アンリ】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-03-24 22:57:51) |
11.前年制作の『ゴッドファーザー』とは対照的にアグレッシブなA・パチーノを堪能できる名作。あの怒鳴り声とFワード連発の台詞はのちの『スカーフェイス』を彷彿とさせる…なんてことはどうでもいいんですが(爆)。で、警察組織の腐敗を痛烈に批判した本作ですが、この当時の警察組織はそんなに腐り切っていたんですかね? そういや70年代の警察絡みのハリウッド映画って「腐敗組織vsはみ出し刑事」ってイメージが強いです。ハリー・キャラハンもそうだったし。 【とかげ12号】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-09-08 19:02:02) |
10.警察が信用できないとなると、この世の中でもし嫌なことに出会ったときになににすがればよいのだろうか。法治国家であるかぎり、警察には公正な目でしっかりみてほしい。 もし裁判所(司法)までがああいうかんじに腐敗していたら、もうおしまいですね。 |
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9.このセルピコはまた見る価値がある映画だと思います。 サスペンスですのでオチがわかるともう普通は見ないのですが、 人間不信になりそうなときこの映画を観るのもいいんじゃないかな。 正義感ゆえ迫害され、見てるほうも一緒に嫌な気分を味わいます。 しかしそれでもいいんじゃないか。 後味が悪かろうと怒りでどうしようもなくなってしまおうと、 同じ境遇に立ったときに人は共感し考えるものです。 それがどう思われようと間違いじゃないと。 決して傷をなめあう映画でもありませんから、 人間不信で癒される映画を観たいと逃げ道を探す人には不向きです。 同じルメットの作品の「12人の怒れる男」を、 この作品のあとに見ることもオススメかな。 正義は必ず報われるんじゃない、でも報われなくても残るものがあるはず。 そう見ていただければこの作品だけでも十分です。 いっとき社会派や重いのばかり見ていたんですが、 このての作品は本当にルメット監督はうまい。映画を観るというよりも、 役者の演技と脚本を楽しむようなもの。 パチーノのこういう初期の暗い目が生かされる演技が好きです。 後半ではあまりの展開に泣いてしまいましたよ。 同情とか哀れみではなくて、悔しくてね。 暗くて後味が悪い映画なのに、妙に勇気がわいてきたりするんです。 そこがこの映画の不思議な魅力です。 自分はなにをすべきか、何にこの気持ちをぶつけようと。 どうにもならない奇妙な正義感さえわいてくる。 こういうのが好きな私は真面目すぎて面白くないなぁ・・ もっと柔軟にならないとなんて、 またテリー・ギニアムやデビッド・フィンチャーに走るのですが(苦笑 【アルメイダ】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-04-03 01:45:41) |
8.《ネタバレ》 観終わった後、切なさが残りました。署内の不正を許せず、断固として朱に交わろうとしないセルピコ。それを貫く精神力は凄まじいものだったと思います。そして彼は強い信念でそれをやり遂げました。しかし彼は正義を貫き、結果全てを失ってしまいます。正義の遂行の代償は大きかったですね・・・。この映画と『トラフィック』見ちゃったら、知りたくない世の中を見てしまったようで、とてもへコみます。 |
7.これだけ救いのない四面楚歌の中で自分の良心と信念を貫き通そうとするアルの姿に感嘆しつつも、報われない正義に空しさを感じる。末端はともかく上司やトップまでが彼を異端者扱いするのはホントに救いがない。 不正義とはいえ大勢に流されれば旨みはあるし仲間内でも安泰なのに、不正を見過ごせないという警官としての優れた資質が仇となって命まで狙われる羽目になる。大方の人ならば不正を知って良心が痛みつつも、保身のために告発どころか同調してしまうというのが悲しい現実だろう。 たとえ理想論であろうともアルのように稀に正義を行おうとする人を葬り去って組織の安泰を図ろうとする、などという不正義が許されてはならないしあってほしくもない。 こういう話が絵空事ではなく現実的でもあるというのは最近の食品業界の不正・汚職事件などを見ても分かるし、何らかの組織に属していれば誰にでも起こりうることかもしれないと思う。 せめて映画では救いがあってほしかったとも思うが、この救いのなさが今も変わらぬ重い問題提起となって迫ってくるのかもしれない。 【キリコ】さん 8点(2005-01-22 22:58:09) |
6.不合理だと誰もが理解しながらも決して口には出さずまとまっている組織の中にあって、筋を貫き通そうとしたセルピコ。仕事の実力、何事にも動じない精神力、信念、共感して協力してくれる者が無いと出来ない事ですね。理想を言うと、組織の為を思うなら、ヒラ刑事の現在は出来る限り我慢して、一日も早くトップになってやりたい改革をやる事だと思いますが。彼女はセルピコのもとを去っていきました。試練に見舞われた時、相手が自分と同じく苦しい事を分かろうともせず、自分の苦しみだけを喚きたてるというお馴染のシーンが繰り広げられ、ラスト、セルピコの側にいたのがアルフィのみだったのは寂しかったです。 |
5.正義を貫くフランク・セルピコがかっこよかったです。 【ギニュー】さん 8点(2004-04-17 19:52:13) |
4.正義を貫くことはとても大変ですね。日本の閣僚や警察も同じようなもんでしょう。はじめは正義感に満ちていても組織という枠の中で次第に悪事に染まってしまう。正義を前面に出してもプラスになることがないもんな。シドニー・ルメットは本当にセルピコ刑事のように生きろといいたいのであろうか。 【hrkzhr】さん 8点(2004-01-13 23:49:34) |
3.切なすぎる。すべてを捨ててまで守らなくてはならない正義って一体。。。私は人生においてくそ真面目になりすぎるな、という教訓をいただきました。 【バチケン】さん 8点(2003-12-31 20:52:58) |
2.真面目に不正に向き合い、自我を押し通した男の悲劇が描かれた秀作です。まだ若いアル・パチーノが正義感あふれる警官を熱演しています(ちょっと変わり者だけれどね(微笑))。飼い犬と一緒の時が唯一くつろげる時間というのも何か寂しいですね。今の日本のように、政治組織や社会風潮のおかしくなった世の中を、もう一度見つめ直すためにこの映画と向き合うのも好いかもしれませんね。 【オオカミ】さん 8点(2003-11-17 10:07:54) |
1.時代背景を考えれば、セルピコという人物像はとてもスリリングなものだ。同時代の幾多の映画が凡庸に感じられる昨今において、理由の無い正義感を押し付ける映画が続出する以降と比べて「何となく感じ取れる人間的な深み」をもった正義感を「とってつけた理由」無く演出・演技出来ている点が今作を名作として今もなお評価させている点だと思う。その点で冗談でも2枚目と言えないアル・パチーノを主人公に起用した点も大きいと思う。「真夜中のカウボーイ」「ドッグソルジャー」等と並んで、「負け続けの僕ら」を表現した素直にいい作品。 【トビキツネ】さん 8点(2003-04-13 22:29:19) |