7.《ネタバレ》 - A Place in the Sun - 原題まま。タイトルから上京した青年の成長物語っぽい爽やかな映画かと思いきや、実は身分違いの三角関係を扱った映画。なのはともかく、まさかのサスペンス。この意外性にヤラれました。
今ならよくあるサスペンスですが、私が妙に惹きつけられたのは、エリザベス・テーラーの美しさだけでなく、無駄に凝ったカメラ位置と音の入れ方です。
アメリカの発展を象徴するハイウェイ。ヒッチハイクする労働者階級の男の背中。振り向けば希望に満ち溢れた爽やかイケメン。『プヒポヒー♪』ここでアンジェラのオープンカーが通り過ぎます。高嶺の花の貴婦人。自分には廃品回収のオッサンの車がお似合いだ・・・このシーンでアンジェラにフォーカスしないのが良いんです。そして後々社長宅に現れるアンジェラ『プヒポヒー♪』振り向くと高嶺の花がこんな間近に!と、オープニングから前フリが素晴らしい。
社内恋愛禁止&女子寮侵入のスリルと、状況とは不釣り合いに陽気なボサノバを掛けるセンス。'51年の映画なのに。
湖の鳥の不気味な鳴き声が女の悲鳴のようにも聞こえる。刑務所の小鳥のさえずりも、きっとジョージを苦しめたに違いない。
ジョージとアリスが乗ったボートを、わざわざ船首から海面スレスレに撮った凝りまくりの画角を、ほんの一瞬しか使わないセンスも見逃せない。
アリスの事件を伝えるラジオ越しに、ボート遊びするジョージたち。ボートそっちのけでラジオにフォーカスするカメラの低さも唸らされる。
ヴィッカース邸に検事が来た時、わざわざクレーンで2階廊下のアンジェラをゆらゆら映し、部屋に入るアンジェラを壁ブチ抜きで映し続け、鏡越しに卒倒するまでを一連(※途中1階の議論が映るからワンカットではないけど)で収める拘りっぷり。
労働者階級と上流階級。恋愛の表と裏。真面目な青年と犯罪。陽のあたる場所とは何処を指すのか。
牧師の言葉「アリスを助けるべき時に、誰のことを考えていた?」心で犯した殺人。キリスト教らしい考えだけど、たしかに。人として重たく刺さる。
囚人が掛ける言葉「天国へ行けるよ(字幕)」聞き取りにくいが『ココよりは良い場所を見付けられるよ』みたいに聞こえる。これまたキリスト教らしい考えだけど、罪を認め、罪を償ったものが逝く先こそ “陽のあたる場所” なのかもしれない。
どうでも良いことだけど、この映画のエリザベス・テーラーって、どっかで観たと思ったら、手塚治虫のメルモちゃん(大人版)だわ。