35.《ネタバレ》 ミュージカルが苦手な私を「凄い!」と唸らせたミュージカル。まず冒頭、マンハッタンを上空から撮った映像に、従来のミュージカルのような夢物語ではないことを予感させる。『ロミオとジュリエット』という古典をベースに、アメリカの抱える移民問題を大胆に描く。従来の全編セットのミュージカルでは成し得なかった現実感、シリアス感が存在する。もちろんミュージカルの醍醐味である歌と音楽とダンスも素晴らしい。中でも圧巻は、決闘に向かうジェット団とシャーク団、そしてマリアを想うトニー、ベルナルドを心待ちにするアニタ、兄を案じながらもトニーを愛するマリアの五重奏。ひとりスタンディングオベーションを送りたいシーンである。そして私が”ミュージカルは苦手”というのを忘れる瞬間である。ラストはここからどう強引にハッピーエンドにもっていくのだろうと思ったら、もっていかなかった(そりゃ、そうだ)。ミュージカルの概念をぶっ壊しながらのこの存在感、この完成度。傑作でしょう。 【R&A】さん 8点(2004-04-15 12:32:31) (良:4票) |
34.《ネタバレ》 想像するにミュージカルの既成概念を打ち破った作品ではないだろうか。それまでのミュージカルといえば、お気軽に楽しく歌って踊って、ハッピーエンドの愛と夢と希望の物語で、シリアスなものは少なく、童話や空想物語に近いものだった。本作品は全編に溢れる若さと躍動感が特徴で、斬新な俯瞰カットやクローズアップや多カット編集により、汗の匂いが嗅げるほど役者に肉薄している。そして暴力抗争の末、少年ギャングの三人が亡くなるという悲劇。シリアス、暴力、ギャング、バッド・エンド、悲劇、これらはミュージカルにふさわしくない題材だ。「フレンチ・コネクション」「LAコンフィデンシャル」「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」等のミュージカルは想像しにくい。素材と形式が合わないからだ。一方で「アウトサイダー」「理由なき反抗」等はミュージカルにしてもおかしくない。理由は登場人物が未成年だから。未成年者はその存在自体があやふやでどこか危なげ、童話や空想物語の人物めいた所がある。青春物語にすれば例え暴力や悲劇を扱ってもミュージカルになる。それの嚆矢が本作品だろう。スタジオを出て町に飛び出したのも特筆すべきこと。しいて命名すればストリート・ミュージカルの誕生。埃にまみれた昼の街の薄汚なさと混雑ぶり、露に濡れた夜の街の不気味な暗闇、それらの中に入り込むことにより、真実味が増し、演技と悲劇に重みが出た。もう一つ言えば芸術性だろう。綻びひとつ見えない完璧なシンクロ・ダンス、オーケストレーションの凝った編曲と演奏力の高さ、楽曲の素晴らしさは云うまでもない。シリアス加減のバランスも抜群で、例えば刑事やキャンディ屋のじいさんが「けんかはやめて~」と歌い出していたら台無しになっていただろう。昔のミュージカルでファッションも題材も古めかしいのに、どこか斬新さを感じさせるのはこれらの為だろう。物語は民族差別、恵まれない環境、若さの暴発、敵味方に別れた恋人、憎悪の連鎖、復讐殺人と盛りだくさん。あんな小さなナイフじゃ死なない、何故救急車を呼ばないのか、死体の処理や葬式はどうした、兄を殺した相手とその日に寝るのか、遅れると何故待ち合わせ場所に電話をかけないのか等、ツッコミどころはある。喧嘩に明け暮れるギャング団はアホだが、主人公二人は違うので感情移入できる。その設定の上手さ。上階の窓から投げつけたられた瓶は世間の冷淡視の象徴だ。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-12-24 23:53:53) (良:1票) |
33.名作とか芸術作とか、そういう呼び方をするのは(個人的に)違和感がありまして。だってこれはバカ映画の範疇に入るでしょ?(ミュージカルは大抵バカ映画という話も?)。ただ~し。コレは、とにかく念の入ったバカ映画、見ごたえある、壮大なバカ映画です。いわば、登場人物がことごとく竹中直人・渡辺えり子ペア、とでも言いますかね、観ててとりあえずは唖然とします。さらに映画後半では「おいおい、歌ってる場合じゃないだろー」と言いたくなるシーン続出。一方乱闘シーンなんかは実に手際よくてホノボノとしています。でもいいんだナ。ちゃんと映画の世界に引き込んでくれますからね。バルコニーのシーン(に相当するシーン)なんかも、実に印象的に迫ってきます。音楽は、いいです。今更言う事もないか(笑)。別にわたしゃバーンスタインの指揮はそんなに好きじゃなくてCDも殆ど持ってない。まして純音楽作品の作曲家としては、本人は自作を生前よく演奏してたけど、どうだろう、果たして音楽史に残るかどうか? でも、本作の音楽は、ウマイ!こういうのは確かにウマイね。聴かせます。 【鱗歌】さん 8点(2004-04-11 02:34:33) (笑:1票) |
32.《ネタバレ》 作品としては音楽も踊りも好きですが、後半のマリアの行動は納得がいかないことだらけ。 彼女は最後に演説をぶちます。「あなた方の憎しみがこの結果を招いたのだ」と。 一理ありますが、止めることができない、止める必要もない喧嘩の仲裁に、中立じゃない Tony を行かせた Maria が悲劇を招いたとも思えます。 あえて仲裁するのならマイケル・ジャクソンに頼むべきだった。そうすれば皆ハッピーに踊ることが出来たのに(笑)。 それにどういう神経で、Maria は自分の兄を殺した Tony とベットをともにできるのでしょうか? 彼女は彼に警察への出頭を促すべきでした。前の晩に出あった恋人の方が、兄よりも大事なんだな。自分の妹にはこうはなって欲しくないと願います。 更に、警察が事情聴取に来たことで Tony との待ち合わせに遅れることを、恋人が殺されたばかりの Anita に頼むと言うのは余りに無神経... ただ何も言わずにちょっと遅れりゃいいだけのことです。完全に自分達のことしか考えてないのだ。 二人が出会った体育館のダンスシーンで、周りの風景が完全にぼやけて二人にだけピントがあっていた。丁度あんな感じで二人だけの世界を作り上げてしまったのだろう。 【マイケル】さん 8点(2004-03-12 15:26:28) (良:1票) |
31.とある日曜の夜、何気なく見ていたテレビで「N響アワー」が始まった。その日はバーンスタイン特集で、私はオーケストラメンバーが楽器片手に「マンボ、ウッ」と言っているのを目撃してしまった・・・。この映画の命はダンスだ。歌も音楽も確かに良いが、 あの躍動感溢れるダンスのシーンがあって、はじめて血が通う。 貧しさ極める生活の中にいる若者たちが、対立グループ相手に虚勢を張りながら、ジャンプし足を踏み鳴らす迫力あってこその「マンボ!」の掛け声なのだ。しかし主人公二人はちっともダンスに絡んでこないし、ストーリーも言わずと知れた「ロミオとジュリエット」の現代版で目新しいわけでは無いので、ひとつの作品としては点は辛くなる。しかし、それを補ってなお余りあるダンスのすごさ。CG技術の無かった時代の生身のエンターテイメントは一見の価値あり。 【のはら】さん [映画館(字幕)] 8点(2004-01-21 18:31:30) (良:1票) |
30. 2003年1月現在、ミュージカル映画は絶滅種と言ってもいい位に皆無。なので、絶滅寸前の60年代に敢えて復権を賭けたその意気込みに8点!因みにロバート・ワイズはミュージカル初体験だったため、実質的な現場指導は振り付けのジェローム・ロビンスに任せっ放しだったとか。その分、フィルム編集に手腕を発揮したのはワイズ本人だったりする。元・エディターだからねぇ。シェークスピアの引用については…「ロミオ&ジュリエット」なんかよりゃ遙かにセンス有ると思うけどな。 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-02 06:29:39) (良:1票) |
29.《ネタバレ》 初見はテレビの吹替版。30年ぶりくらいの視聴。 (Upper) West Sideはマンハッタンの地域名。あまり治安が良くない貧しい街として描かれてる。日本だと…西成? これは多感な時期の少年・少女目線の作品だから、ミュージカルパートに大人は入ってこない。先に住んでいたヨーロッパ系移民と、来たばかりのプエルトリコ移民。彼らは同郷の仲間でグループを作り、どうでもいい縄張り争いに一生懸命だ。 ジェッツもシャークスも若者たちは鮮やかな色の服を着ている。対する大人は白、グレー、茶に制服。 街並みは、ウエストサイドだけに西日が当たるのか、カラフルだけど色褪せている。対して夜の灯りや濡れた路面はどこか輝いて見える。 ミュージカルパートは素晴らしいものばかりだが、特に『クインテット』の疾走感が物凄い。 夜の闘いを前に昂るジェッツとシャークスのコーラス、普段と変わらずベルナルドの帰りを待つアニタ、トニーとマリアのお互いを求め合う歌声は伴奏を飲み込むように溢れ出る。5組の歌の混ざり合いは息を呑む美しさだ。 全てを染める真っ赤な夕焼け。大人たちには普通の夕焼けも、若者たちには燃えるような赤に見えているんだろう。 トニーが死に、抗争も愛も終わり、一人、また一人と運動場から立ち去る薄汚れた服装の若者たち。あれほどみんなが待ち望んだ『トゥナイト』。夜はただ暗く、街灯は虚しく地面を照らす。街が真っ赤に染まった『クインテット』とは対照的に、暗いモノトーンの運動場を赤色灯の赤い光だけが無機質に点滅するラスト。60年経っても学べるものが多い作品。 【K&K】さん [地上波(吹替)] 8点(2021-02-04 22:32:58) |
28.ロバート・ワイズのミュージカルはあんま好きじゃないんだよなー。 「罠」とか「地球が静止する日」とか普通の映画の方が面白いし。 それでも、ブロードウェイの狭い空間から飛び出し、のびのびと弾け飛ぶ若き俳優陣の熱気!踊る、踊る、踊る! 腹の底からエネルギーを放出する叫び。 生きる活力をガソリンにして注入されるようなパワーに溢れている。 ストーリーは小さな不良グループ同士の抗争という筋書きだが、 宗教争いや全ての戦争に対するメッセージも刻まれているのだ。 歌唱シーンの吹き替えはかなり残念だけど、それでも体を震わせる熱意をひしひしと感じられる。 ナタリー・ウッドの演技、マーニ・ニクソンの力強い歌声。 文字通り怒りに満ちたものがある。 リチャード・ベイマーの演技、 ジョージ・チャキリスの存在感も凄かった。トレードマークの赤のように燃え上がるダンス、 リタ・モレノの情熱的な踊りも見事。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-03-13 00:09:45) |
27.《ネタバレ》 私の考えている、ミュージカルの(特に作曲者の)評価基準に、音楽による世界観というのがある。その作品世界を的確・端的にあらわした音楽、そしてどの一曲をとってみても、その世界の一部であることが明白に分かる統一感。 『南太平洋』は聴いただけで潮の香りがしてくるし、『キャッツ』では忽ち月夜の猫の集会に引き込まれ、『ミス・サイゴン』では東南アジアの落日の前に喧騒の街が浮かび上がる。そう多くは無いそういった優れた楽曲の一つが、この『ウエストサイドストーリー』だ。そのプロローグで我々は、対立する不良グループのイキがった争いを目の当たりにする。 しかも、このシーンはダンスまでが一体となって、二つのグループの諍いとその緊張感を表現していた。とりわけ、彼らの小競り合いがそのままダンスになっているのは見事で、才能というものを感じさせる。 ジュリエットであるマリアがトニーと共に死なないのは、ちょっとバランスが悪い感じはするのだが、一方それにより物語の視点が「二人の悲劇」にある感じの原典よりも、二つのグループの対立に重きが置かれ、よりテーマを前面に押し出していて、それはそれで良いのかも知れない。 【Tolbie】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-05-28 19:47:27) |
26.ロバート・ワイズ監督はかなり色んな映画を撮っている人ですが「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエストサイド物語」と映画史に残る素晴らしいミュージカルを撮っているだけあって僕の中ではミュージカルのイメージが強い監督です。 心温まる物語と歌の素晴らしさで魅せる「サウンド~」と歌の素晴らしさプラス、キレのある素晴らしいダンスで魅せる本作。どちらも元の話があるものをスケールの大きいミュージカルに仕立て上げた演出が見事。本作の場合は共同で監督した振付師ジェローム・ロビンスの功績も大きいですね。 ミュージカルとして話の展開は好みではないですが、キレがありカッコよくて、特に前半のユーモアにあふれたミュージカルシーン、それを支える歌、音楽、ダンスのどれもが本当に素晴らしく見応えがある作品です。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-01-23 21:12:43) |
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25.学生時代に授業で観ました。10代後半の娘っ子だった私ら、ミュージカルにとんと縁がなく事前情報もなしに見せられたもんだから、いきなり登場人物達が歌いだし踊りだし…に大爆笑してしまった思い出。推薦した教授はさぞやがっかりしたことでしょうか。こんな最悪な環境が初見だったに関わらず、十数年たったいま、時々ムショウに観たくなりDVDをレンタルしてしまうのです。お話そのものは「ロミオとジュリエット」の古典ベースなので現実感がなく古くさいし悲劇ラストでいいとこないし。でもあのミュージカルシーンとダンスの爽快感が忘れられないのです。特にアニタ役のリタ・モレノの圧倒的で情熱的なダンスが素晴らしい。これでアカデミー助演女優賞獲ったと最近になってようやく知ったけど納得です。マンボ、マリア、トゥナイト、アメリカ、そしてクール! そうそう「ぱお!」がマイケルジャクソンの専売特許ではないと知ったのもこのミュージカル映画でしたw 【どぶん子】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-07-06 15:20:34) |
24.昔映画館でただ一度観賞したきりです。名作ですね。でも感動度は個人的にはちょっと薄くて、満点でない理由は、音楽が好みではないことと、ジョージ・チャキリスが主人公ではなかったことです(主役を食って存在感十分ですが)。 【ジャッカルの目】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-08-13 21:13:21) |
23.俺、いまだに運命の人に出会った時には、必ず周囲の情景は霞んで二人の輪郭だけが実体を伴って現われるはずだって本気で信じてます。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(吹替)] 8点(2005-05-01 10:33:12) |
22.ストーリーを意識して見たのは最初に見た一回だけで、以後は歌とダンスしか見ていません。こういう見方は邪道なのですかね。けど大好きな映画です。なんと言っても音楽が素晴らしい!特に好きな一曲はマリアです。ニ、三年前紅白歌合戦でジョン・ケン・ヌッツォさん?が歌われているのを聞いて初めてこの映画を見ました。けどそんなに古いなぁーとは感じませんでした。と今打っていたらラジオから「マリア」が流れてきた…。ちょっといや、かなりびっくり。 【ショウガ焼き】さん 8点(2004-05-29 02:45:04) |
21.バーンスタインの音楽は最高ですね。それにも増して、うなってしまったのが、本編終了後のスタッフなんかの紹介画面。壁の落書きや看板を使ってのセンスが光っている。内容も鋭い教訓が詰まってます。「何時になったら気づくんだ」「憎しみが彼らを殺したのよ」町のチンピラ軍団と一緒にしては失礼だが、色んなレベルで気が付かない人がいるんじゃないかな。乗り越えられない壁はあるのだろうか。 【パセリセージ】さん 8点(2004-05-06 18:20:43) |
20.いいですねェ。すごく楽しくもあり悲しくもありな作品です。これぞミュージカルだと思います。「Tonight」「America」など、素晴らしい曲も多々あり。ストーリー的にはさすが"現代のロミオとジュリエット"です。最後の結末は賛否両論あるかもしれませんが(ちなみに肯定派です)、いい映画だと思います。 【A.O.D】さん 8点(2004-03-16 22:47:38) |
19.街の中でいきなり歌って踊りだすのが楽しい♪ストーリーうんぬんより歌とダンスが最高でした。 【ジョナサン★】さん 8点(2004-03-16 16:52:03) |
18.ストーリーを忘れて画面に食い入ってしまうほど この作品のダンスは魅力がある。胸の奥底からわいてくる ワクワク感というか・・。また、リタ・モレノの 上品ではないけどなんともいえない香りのしそうな魅力がたまらない。ただストーリー的にまずまずといったくらいだが それでもこの曲とダンスのすばらしさだけで8点つけられる。 |
17.《ネタバレ》 いや、随分変わったミュージカルですね。現代版ロミオとジュリエットと呼ばれているらしいですけど、まさに看板に偽りなしです。ミュージカルながら人物の描写はきっちりと(ミュージカルだから荒いというわけではないが)されていますし、救われない最後も印象的です。確かに最後は幸せになって欲しいという感じはありますがこれはこれで良いと思います。それにしても、やっぱりミュージカルってのは大変そうですね。普通の演技をするだけならまだしもああいう激しいダンスなどもやらなければならないんですから。そう云う面でも、役者たちの頑張りには本当に脱帽します。 |
【●えすかるご●】さん 8点(2004-03-08 01:39:46) |