2.この映画のジャン=ピエール・ジュネというフランス人監督の作品は大好きで、映画作品はすべて観ている。
有名なのは、世界的にスマッシュヒットとなった「アメリ」だが、作品の世界観的には、それ以前の「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」の方が印象深い。(ハリウッドにお呼ばれした「エイリアン4」もかなり好き)
この監督の特徴は、なんと言っても奇妙な禍々しさを持つ独特なファンタジー性だ。
今作では、久しぶりにその特徴が溢れ出て、ジャン=ピエール・ジュネというクリエイターの原点回帰を観られた気がする。
「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」のようなおどろおどろしさは無く、これまでになくコメディ性の高い映画世界だったが、登場するキャラクターの奇妙ぶりは、彼らの表情を見ているだけて楽しい。
一方で、主人公を始めとする奇天烈なキャラクターたちのそれぞれが、何かしらの悲哀を携えている。
それを作品中で明らかにすることはないけれど、彼らの瞳の奥にはそれぞれの人生の“重さ”みたいなものが見え隠れするようで、印象的だった。
そういうキャラクター造形の巧さも、この監督ならではの創造性だと思う。
奇妙な住民たちが織りなす小規模で大胆なこの“復讐劇”には、一風変わった爽快感と人間の愛らしさが溢れている。