1.《ネタバレ》 金城武が返還直前の香港を舞台に暴れ回るクライムサスペンスで、そこにロマンス風味が味付けされた逸品。
返還前の香港は興奮と喧騒の中にあったが、その一方で、一種のとまどいや彷徨い、そして退廃的なムードも漂っていたように思う。
行き場を見失った者たちが、当てもなくただ彷徨う。
特に、そんな雰囲気が出ていたのが香港の夜であり、場末のホテルでありバーである。
その頃の雰囲気を、まるでその場にいるかのような臨場感で撮ってみせたのが本作で、まだ若くてシャープだった頃の金城武が主演の男を演じている。
色々な時期の金城武を観てきたが、この頃の、というか本作の金城武は抜群にかっこよかった。
デビューしたての頃のあどけなさも抜け、かといって丸みを帯びたおっさん顔にもなっておらず、一番いい時期の金城武を観ることができる貴重な一本。
殺し屋稼業で、香港の夜をうろつき、時には喧嘩をふっかけ、ギャンブルに身を投じ、素性の分からない女と場末のホテルで一夜を共にする。
ウォン・カーウァイの『恋する惑星』や『欲望の翼』と似た風合いの作品で、世界広しと言えど、この頃の香港にしかなかった、妖しく退廃的な雰囲気に充ちている。
この頃の金城武と返還前の香港。
時間的に限定されたこの二つが融合することにより、今となっては再現不可能な作品に仕上がっている。
劇中では、とにかく金城武が走る!走る!
それも物凄いスピードで走りまくる!!
若さ爆発の素早い動きも、観ていて爽快だった。
【以下、ラストねたばれ】
二人が結ばれないラストは、格別の趣き。
男は変わらぬその日暮らしを、女は夢だった場所へ飛行機で旅立つ。
お互いの人生が一時だけ交錯するが、それはあくまで二人それぞれにとってのほんの通過点であり、再び二人は別々の道を進んでいく。
今頃、相手は何をしているのかなぁ、と思いを馳せつつ。
何とも言えぬ余韻を残す美しいラストだ。