1.ロングショットを主体とし、乱れた黒髪や逆光の陰影によってその表情をなかなか顕現させない佐藤寛子、東風万智子、大竹しのぶ、井上晴美らの女優陣。
その分、全身の動作と佇まい、発する声の抑揚と響きがその情念を前景化させる。
とりわけクライマックスの舞台となる石切り場内部の坑道や地底湖で、エコーがかかった彼女らの呻き・叫びともつれ合いは強烈な凄みを発散する。
巻頭の狭く血に塗れた浴室と対になる、青白い光線の差す石切場の壮観と幽玄な趣き。暗い洞内に差し込む外光のアクセントは聖性をも湛えて美的である。
竹中・佐藤の睦み会う背後にあるネオンサインの鮮烈さも目に沁みる。
新宿歌舞伎町界隈を彷徨う主人公を捉えるゲリラ撮影の生々しさ。その望遠の画面が、あるいは緩い傾斜の天井までを画面に取り込んだ事務所の空虚な広さと闇が、主人公の孤独を際立たせて印象深い。