1.《ネタバレ》 主人公が海を泳ぎながら「私にもう1日ください」と神に祈る様子や、過去の思い出を断片的に思い返す様子、カモメに導かれるようにして島にたどりつき、街の明かりを一望した瞬間など、どのシーンひとつをとっても、映画のタイトルのようにどっしりと深い味わいがあり、哲学の重みさえ感じ取れた。波の下では生存不可能な厳寒の海に囲まれ、火山の害にもめげずに暮らしを立て直そうとするアイスランドの人々は、つねに神の存在を身近に感じているらしい。そして、情け容赦のない自然を相手に 「戦う」 というより、「共生」 して生きていこうとしているようだ。一神教にすがることはないけれど私たち日本人も、地震や津波、台風などの天災にさらされ続けながら、害のために荒れた地をならしては、新たに生活を築いていく。そう考えながら観ていると、次第にかの国の人々への親近感や畏敬の念が湧き起こってきた。心ならずも死を迎えた者への鎮魂や、試練を乗り切って得た生の営みの尊さを、ひとりの男の奇跡を通して静かに謳いあげている佳作だと思う。