1.《ネタバレ》 谷村しん役の濱田ここねさん(ここねちゃん)は本物を見たことがある。「映画館で待ってます!」と書かれた名刺をもらったが、その時はただの子どもにしか見えなかった。
もとのTVシリーズはほとんど見ていなかった(朝ドラなど大の男が見るものではない!…暇はあったのだが)ので比較はできないが、映画は冒頭からいきなりシビアな感じの映像で始まり、続く家の中でも囲炉裏の火しか明かりがないようなのが明治のリアルを感じさせて気が引き締まる。また素人なので技術的なことはわからないが、映像面や背景音楽(エンディングテーマを除く)なども好印象に思えるところが多く、予告編の軽薄な感じは本編にはなかったように思われる。特に終盤で、外で雲が切れたらしく室内が早春の陽光で満たされる場面は、わざとらしいともいえるが印象的だった。
ただし登場人物のうち、父親役が子ども思いなのか粗暴なだけなのかがよくわからず、存在意義まで疑わしいのは難点に思われた。また終盤で提示されたテーマらしきものも、今どきこんな話で大丈夫なのかとは思うが、まあこれはこれで仕方ないのだろう。
ところで自分としては最近、泣ける映画はとりあえず警戒して初見時には評価を保留する一方で、登場人物が好きになれる映画についてはいきなり全面支持したりする傾向があるが、この映画はその両方に該当するので困る。もとのTVシリーズが内外で支持されたのは、まずは主人公が懸命に生きる姿が感動を呼んだということだろうが、その面では恐らく、この映画もまた旧作の価値の核心部分を確実に受け継いでいるのだろうと思われる。ただの子どもにしか見えなかった子役が、全編にわたってこれほど健気で誠実で一生懸命な姿に見えているのは、やはり本人の才能なり頑張りもあってのことに違いなく、他のことはどうであれ、とりあえずこの子限定でも見てよかったと思える映画になっていた。ここねさん(ちゃん)は南国の生まれなのに、雪の中で本当にお疲れさまでした。大変でしたね。