1.この映画、褒めたくないんです。と言ってもつまらない訳ではなくって、その逆、私は大いに楽しんだのです。しかしこの作品、決して派手な作品ではなく、どっちかというと低予算、いわゆる掘り出し物の類です。登場人物も少ないし、舞台も限られているし。なので、あまり期待を持たせるようなことは書きたくなくって。まちがっても何やら娯楽超大作であるかのような期待をもって観てしまうと、それはそれは失望するんじゃないかと思うのです(でも、DVDのパッケージを見ると、何だか派手そうに見えるわなあ)。えーと、まず断わっておくと、登場人物がとても少ないので「パニック」は起こりません、ハイ。とある父親と息子が乗った列車、夜がふけるに従って乗客も減ってゆき、ま、減り過ぎるくらい減っちゃうのですが(笑)、そのわずかな乗客を乗せた(しかもちょっとクセのあるヤツも交じってる)列車に異変が起こる。停車駅に止まらない。車掌も行方不明。何が起こったのか、この先どうなるのか。という訳で、事態がつかめないまま引っ張っていくサスペンスのうまさが、本作の見所。いいえ、この先意外な展開が待ってるなんていう変な期待をもってはいけません。「先」を期待するのではなく、「今」のサスペンスを楽しむ。何が起きているのかわからない不安、その気持ちをひたすら、開かないドアにぶつけ続ける焦燥感。映画終盤が近づくにつれ、何だか過去のアノ映画やらコノ映画を彷彿とさせたりして、その辺りからも色々ケチがつきそうな気もしますが、そういう失望するかしないかの危ういバランスも含め(笑)、この不安定感こそ、サスペンス。さあ、どうです、面白くなさそうでしょ。では、作品の方をぜひご覧くださいませ。