3.《ネタバレ》 言語学者という高い知性を必要とされる博士が、言語とともに記憶を失っていく恐怖は、それは耐え難いものに違いない。
でも、時間が経つにつれて、それを恐怖と感じることさえもできなくなっていく。
自分自身がわからなくなっていく不安が、カメラワークと静かなピアノの響きを通しても伝わってくる映画だった。
人間は確かに今の一瞬を生きているけど、記憶を無くしてしまったら、それは単に機械的に生命を維持しているだけで、ただ虚しい。
そう考えると、アリスが将来の自分にあのようなメッセージを送ったのは、仕方のないことなのかもしれない。
そして、夫がアリスの介護を申し出た娘に、お前は自分よりもいい人間だと自分を責める場面は、この病気に直面した家族の現実を伝えているように思えた。自分を責めることはないのに。
最後に、ジュリアン・ムーアの演技は圧巻だった。