2.そりゃ話はひどい。でもね、こういう荒唐無稽なストーリーで、でも軸にはなんかニヒリズムみたいなものが一本感じられて、ほとんどファルスに近い大量殺人ドラマが繰り広げられるって、鶴屋南北の歌舞伎と同じじゃないか。沼田曜一が神出鬼没するあたり、歌舞伎の演出を思わせるし、狂った教授夫人が室内でまわしている傘なども歌舞伎調だなあと思う。騒がしい宴会場から酔った女がふらふらと静まった外へ出ていくあたりの雰囲気も好きなの。新東宝の闇って、独特のくすんだ色調で、こういう闇に合う。みんながはしゃぎながら嬉々として滅んでいくような前半の展開に、私はけっこうゾクゾクするものを感じてしまう。すごく映画として満足してしまう。そういう意味で、これ『東海道四谷怪談』の、よりクレイジーな現代姉妹編と見たいんだ。