2.《ネタバレ》 主人公が見たかったのは“人類の行き着く先“。そこにあるのは純粋な探究心。そして争いを繰りかえす現代人に対する”あきらめ“でした。未来には希望がある。技術の進歩、社会の成熟が世界を平和にすると。だから彼は未来を目指します。しかし80万年後の世界、人類の行き着いた先は、彼の期待したものではありませんでした。モーロックとイーロイたち未来人の世界。見た目は違っても元は同じ人間。人間が人間を支配する。人間が人間を一方的に食う世界は、まさしく地獄です。現代人よりもはるかに性質が悪い。感情を捨て、自らの存在意義を捨てたイーロイ。野獣と化したモーロック。人類は”進化“ではなく”退化“した。未来人は人間であることを棄てたのです。未来人を再び”人間“に戻すために、主人公は80万年後の世界に戻ります。3冊の本を手にして。本は主人公の言葉を借りれば”何千年もの努力の結晶“。人類の営みの記録です。知識を後世に伝える”タイムマシン“とも言えます。人の一生は短い。1人の人間が経験できることはほんの僅かです。しかし本を介せば、莫大な量の経験や知識を得ることが出来ます。それが人間の知恵。知恵を放棄した未来人が人間でなくなるのは当然です。知恵はより良く生きるためのもの。それさえ捨てなければ、きっと人間は理想の世界を築ける、そんなメッセージが本作には込められているのだと思います。